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GEの本業回帰から分かるグローバル経済の状況

エンリチ 加谷珪一 GE

米国の電機大手ゼネラル・エレクトリック(GE)社が、金融事業の大半を売却したことが話題となっている。グローバルな市場に何が起こっているのだろうか。

巨大銀行並みの金融部門を持っていたGE

GEは2015年4月10日、同社の金融部門が保有する約265億ドル(約3兆1800億円)の不動産を米投資会社などに売却すると発表した。同社はかねてから金融事業の大幅な縮小を進めており、2016年までに利益に占める本業の割合を2013年の55%から75%まで高める方針を掲げている。

今回の発表に合わせて同社は、2018年までに本業の割合を90%まで高める新しい目標を設定しているが、本業は非常に好調なので、新しい目標の達成も容易と考えられる。GEはこれで完全な製造業の業態に戻ることになる。

同社は世界屈指のメーカーだが、GEキャピタルという巨大な金融部門も抱えており、大手銀行に匹敵する金融資産を保有していた。リーマンショック前の好景気の時には、本業をはるかにしのぐ利益を金融部門がたたき出していたこともある。

製造業は、自社の設備投資に多額の資金を必要とするため実は金融との関係が密接である。GEの場合、製造しているものが、発電所のタービンやジェットエンジン、CTスキャンといったかなり高額な製品なので、これを購入する顧客のファイナンス支援も必要となってくる。

トヨタも巨大なファイナンス会社を保有し、顧客に自動車ローンのサービスを提供していることを考えると、GEがこれだけの金融部門を抱えていること自体は何ら不思議ではない。

ただGEの場合、金融サービスがかなり肥大化してしまい、一時期は消費者金融事業を手がけるまでになっていた。リーマンショックの前までは稼ぎ頭だったが、リーマンショックの際には、逆に全体の足を引っ張る結果となっている。

一方、本業の方は、全世界的なインフラ投資の活発化によって、好調な受注が続いている。中国をはじめとする新興国の景気失速は、典型的なグローバル企業であるGEの成長にブレーキをかけるかと思われたが、今のところ大きな影響は出ていないようだ。

同社はかつて原発を多数手かげていたものの、原発は収益性が低いため、現在ではあまり積極的に営業活動を行っていない。逆に途上国における火力発電プラントの建設需要は引き続き旺盛であり、これが同社の収益にも貢献している。

さらにいうと、米国はシェール革命によってエネルギーの自給が可能となり、米国内でも設備需要が旺盛になっている。米国は世界でもっとも安くエネルギーを調達できる国のひとつであり、米国内に工場を建設する動きが加速しているのだ。日本メーカーもその例外ではなく、米国に工場を建設するところは少なくない。

加谷珪一

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