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実はポジティブ・シンキングではない

kaya1910

「お金持ちになった人でポジティブシンキングな人はいない」。こう説明すると多くの人が首をかしげるかもしれない。お金持ちになるためには、物事を前向きに捉え、積極的にリスクを取ることが重要とされているからである。実際、その通りであり、マインドが後ろ向きな人は基本的に成功しにくい。だが重要なのはポジティブという言葉をどう理解するのかである。

自分が思いついたアイデアは常に5人が思いついている

ポジティブ・シンキングというと、一般的には、物事の良い面を捉え、悪い方向には考えず、人生はうまくいくと捉える思考法と認識されている。もし、この定義をポジティブ・シンキングとするなら、たいていのお金持ちはまったく当てはまらないだろう。

ビジネスや投資で成功するためには、常に最悪の事態を想定し、そうなった時にはどう対処するのかというプランを持っておく必要がある。チャンスというのは、待っていれば一定確率でやってくるものだが、その間に、自身が大きな負債を負っていたり、ゲームから退場した状態では意味がない。

確実にチャンスを掴むためには、最悪の状態を回避することが最も重要であり、成功者というのは、ポジティブ・シンキングどころか、常に悪いことばかり考えているというのが現実なのだ。

ベンチャービジネスを立ち上げる人などはさらにその傾向が顕著である。

ベンチャービジネスというのは夢を追う仕事であり、起業家というのは壮大な夢を掲げることも多い。だが、現実の創業というのは夢とは正反対の場所にある。

たいていの人は、自分が新しいアイデアを思いつくと、自分だけのオリジルと考える傾向が顕著なのだが、現実は正反対だ。他人に自分のアイデアを盗まれたと憤慨している人をよく見かけるが、この話も半分は思い込みである。確かに人のアイデアをパクる人というのは一定数、存在しているのだが、発案した人のアイデアが100%独創的なのかというと、たいていの場合、そうではない。

現実にベンチャービジネスを創業する起業家たちの間では、「自分が思いついたアイデアは、どんなに独創的だと感じていても、すでに5人以上のライバルが同じことを考えていると思え」という格言がある。中には大まじめに、日本で独創的なアイデアを思いついた場合、ライバルは5人しかいないが、シリコンバレーでは15人になる。どう考えても日本で起業する方が有利だといった議論をしている人もいる。

これがいわゆるポジティブシンキングな人だった場合、「私のアイデアは画期的であり、これは絶対にうまくいく」と考えてしまうだろう。すでに競合がいることを想定していないので、実際にビジネスをスタートするとライバルにコテンパンにやられてしまう。

一連の話は、自分は陳腐な発想しかできないと厳しく自己評価することこそが、成功のカギを握るという現実を示している。

加谷珪一

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