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外国のエアラインが日本から撤退するのはナゼ?

エンリッチ 加谷氏 コラム

1989年の就航以来、25年にわたって東京とロンドンを結んできた英ヴァージン・アトランティック航空が2015年2月、とうとう日本から撤退した。偶然にもその翌日、カタール航空がやはり日本路線からの撤退を検討しているとの報道が出ている(同社は報道内容について否定)。日本の空を巡る状況はどうなっているのだろうか?

日本の航空市場は相対的に見ると3分の1になってしまった

よく知られているように、ヴァージンは、世界的に有名な実業家であるリチャード・ブランソン会長が率いる英国のエアラインである。機内にバーカウンターを設置したり、豪華なラウンジを提供するするなど、航空業界の常識をことごとく塗り替えてきた歴史を持つ。

日本路線においても、自宅から成田までの送迎など、独創性のあるサービスを展開してきた。本サイトの読者の中にも、同社のファンは多かったはずである。

カタール航空も機内サービスでは非常に定評のあるエアラインである。エコノミークラスでも数多くのお酒を楽しめるエアラインは他にはあまりないだろう。

日本から中東へ移動するニーズはそれほど多くないと考えられるが、同社はカタールをハブに、欧州全域に路線を展開している。欧州の格安ツアーやマイナーな欧州都市へのフライトには相応のニーズがあるはずだ。

カタール航空は、撤退については否定するコメントを出しているが、こうした話が外国のメディアで報じられるということは、日本発着便の収益性について疑問視する声が業界内にあるからだろう。

日本いるとあまり意識しないが、日本の航空市場はグローバルに見ると急激に縮小している。新興国の需要が拡大し、航空輸送の市場規模が急拡大したことから、相対的に日本市場が萎んでいるのだ。

ここ20年の間に、飛行機の旅客数は、北米が約2倍、欧州が約3倍、アジアは約4倍に増加している。一方、日本の旅客数は、同じ期間でほぼ横ばいという状況であり、相対的に見れば、日本の航空輸送の規模は3分の1に低下してしまった計算になる。

筆者が以前、米国に出張に行き、日本に帰国した際、近くにいた外国人乗客のほとんどが、成田でアジア向けの便に乗り換えていった。筆者と一緒に日本に入国する人は誰もいなかったのである。

乗ったのは米国のエアラインだったが、日本発着といっても、実質的にはアジアへの経由地になってしまっている可能性が高い。このままだと、日本の航空輸送は完全に世界から取り残されてしまうだろう。

加谷珪一

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