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ジョン・ロックフェラー(スタンダード石油創業者)

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ジョン・ロックフェラー氏は、米スタンダード・オイルの創業者で、歴史上もっとも多くのお金を稼いだ人物として知られている。ロックフェラー財閥は、一時的は米国の多くの企業を支配下においていたことから、ロックフェラー財閥が米国の政治や経済を陰で操っているといった、一種陰謀論的な話題の対象になったこともある。だが、ロックフェラーの実像は、豪腕ではあるが戦略的な実務家であり、彼の手法は、今を生きる我々にとっても参考になる。

石油の将来を信じ、油田ではなく流通業に邁進

ジョン・ロックフェラーは1839年、ニューヨークで生まれた。父親はあまり真面目な人物ではなかったとされるが、信心深いパブテスト(プロテスタントの一派)であった母親の影響からか、ジョンは真面目で熱心な少年に育った。質素倹約を信条とする彼のポリシーは少年時代に培われたものと言われている。会計を学んだのち、ある会社の経理担当の職を得るが、ここでジョンは取引の手順や資金の回収など、後の石油会社の経営に役立つ知識を習得している。

20歳になり、ジョンは友人と会社を設立。穀物の卸業務と運送業からスタートし、その後、オハイオ州クリーブランドにある小さな製油所を所有することになった。これがのちのスタンダート石油の前身となる企業である。

今でこそ石油は、社会に必要不可欠な存在だが、当時はまだそのようには認識されていなかった。だがこの時、ジョンは、近い将来、石油が莫大な富を生み出すと直感し、ひたすら競合となる製油所を買収し規模の拡大を図った。

この時のジョンの思考回路は極めて論理的である。当時、石油ビジネスに大きな将来性を感じたのは彼一人ではない。だが多くの人は、油田の採掘ばかりに目を向けてしまった。確かに油田を掘り当てることができれば、大きな富を得られることは誰にでも想像できる。だがジョンは、油田の開発には目もくれなかった。

油田の開発はリスクが大きく、掘り当てられるかどうかは、かなりの部分が運に左右されてしまう。このような賭けに近いビジネスは、実直なジョンには魅力的には映らなかった。また、石油が巨大なビジネスに成長するのであれば、最終的に業界で大きな影響力を持つのは流通や販売の部分である。流通・販売の分野であれば、それほど大きな資本を必要とせずに参入が可能であり、しかも、着実にビジネスを成長させることができる。

この発想は実はソフトバンクの孫正義社長とよく似ている。孫氏は起業するにあたり、今後、急成長が期待できるソフトウェアの業界を選択した。だが多くの起業家とは異なり、孫氏はソフトウェアの開発には手を出さなかった。ソフトの開発は、うまくいけば大きな利益を得られるが、失敗することも多く、賭けの要素が強いビジネスである。

孫氏はソフトウェアの開発ではなく、とりあえず参入が容易で、着実にビジネスを成長させることができる流通の分野を選択した。ソフトバンクという社名はここから由来している。

ソフトバンクは、ソフト流通の世界では有力な企業に成長し、孫氏はそこを基盤に事業の拡大を図っていった。孫氏がロックフェラーから直接ヒントを得たのかは定かではないが、基本的な考え方は同じである。

加谷珪一

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