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価格破壊が新次元に。聴き放題、読み放題サービスの衝撃

インターネットの普及によって、これまで様々な分野で価格破壊が進んできた。だが最近は、ネットによる価格破壊が新しい次元を迎えようとしている。

音楽聴き放題サービスはリスナ-の聴き方を根本から変えた

ヘッドホン

こうしたネットの影響をもっとも受けているのが音楽業界である。きっかけは、月額固定料金を払えば、すべての楽曲が聴き放題になるというストリーミング・サービスである。

海外では音楽聴き放題サービスが急激な勢いで普及している。聴き放題サービスとして有名なのは、スウェーデンの配信企業であるSpotifyや米国のPANDORA、アップルが提供するiTunes Radioなどである。最近ではアマゾンも同様の定額配信サービスの開始を発表している。

音楽聴き放題サービスは欧米市場における音楽の聴き方を根本的に変えたといわれている。Spotifyの場合、無料会員の場合には、数曲に1回の割合で広告が入る、音質が低い、ダウンロードができないといった制限があるものの、基本的に聴きたい曲をいつでも聴くことが可能となっている。

特に注目すべきなのはラジオと呼ばれる機能で、好きな分野やアーティストを選択すると、それに関連した音楽が次々流れてくる。

同社の選曲アルゴリズムには定評があり、利用者が好みそうな曲を上手に選曲してくる。筆者も実際に試してみたが、「よくぞ、ここまで自分の好みを理解しているなあ」と感心するくらい、ドンピシャリの曲を配信してくる。有料会員であれば、気に入った曲をその場でダウンロードすることも可能である。

このようなサービスが出てくると、とりあえず音楽を流しっぱなしにする利用者が増えてくることが予想される。実際、こうした配信サービスの顧客の多くは、そのような聴き方をしているといわれているのだが、これは音楽業界のビジネスモデルを根本からひっくり返す可能性がある。

これまで、音楽のダウンロード販売では、販売会社と主要レーベルは個別の曲ごとに契約を交わしていた。だが、聴き放題サービスでは、サービス提供者とレーベルは包括的契約を結ぶケースが多いといわれる。包括契約の場合、アーティストに支払われる金額は少額になってしまう可能性が高い。

こうしたビジネス形態が主流になった場合、売上げの利益配分は従来とは大きく異なったものになるだろう。場合によっては、アーティスト、レーベル、配信会社の関係が大きく変化することになるかもしれない。

加谷珪一

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