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人の「本音」を学べる読書術とは?

エンリッチ_高畑好秀_読書

メンタルの強さを自負するビジネスエリートでも、心身のバランスに戸惑いを覚えることはあるのでは? そんな、悩めるエンリッチの皆さんに、メンタルトレーナーの第一人者、高畑好秀氏が、独自の視点でアドバイスする本コラム。今回のテーマは「読書」です。

ビジネス書やマネー本に
著者の本音は記されていない

経営者や資産家ともなると、自己研さんのために読書が趣味という方もいますよね。ビジネス書や経営書、金融や資産運用に関心が高いのであれば、ファイナンス、最近は株や為替といった投資の指南本もたくさん出ていて、知識を養い見識を広めるという点で、こういった習慣を持つことは悪くありません。異なるフィールドに触れることで、新たな世界を知ることができ、ストレス解消にもなりますし、普段とは違う脳のツボを押すことで刺激され、メンタルバランスを整えるといった効果も期待できます。

人の心の機微、リアルな考えを追体験したいという目的で、ノンフィクション作品を好む人も多いようです。ところが私は、人間について深く知り・理解したいなら小説をはじめフィクション作品をお勧めします。私も本の虫ですが、読むのはほとんどが小説ですよ。

なぜ、ノンフィクションよりフィクションの方が、人の真実を学ぶのに向いているのか。それは、多くのアスリートを見ていて、あることに気付いたからです。

例えばプロ野球。トップ選手ともなれば周りから教えを乞われるというもの。スラッガーならバッティング技術、ピッチャーは投球についてアドバイスを求められ、彼らは親切丁寧にコツを打ち明けているわけですが…そこで私は、ふと疑問を覚えました。というのも、いくらチームメイト、あるいは同じスポーツに身を置く仲間だとしても、基本的に皆はライバル関係。自身のテクニックを包み隠さず伝授しますかね?
 
そこでコッソリ聞いてみたところ…予感は的中しました(笑)。

彼らは必ずしもすべてを伝えるのではなく、「ここまで」と境界を引いたうえでレクチャーしていたのです。「やっぱりそうか」と思うと同時に「人間って複雑で面白いものだな」って痛感しました。

ですが、これって当たり前の話で、ジャンルをビジネスに置きかえると、誰もが納得するはず。仮に優秀なメーカーが、自社の技術をやすやすと周りに教えることはありませんよね。トヨタは、燃料電池車「ミライ」を開発した際、特許を無償開放しましたが、これは燃料電池という未知のジャンルで一社が技術を独占しても、市場が広がらないと判断したため。ライバルが増えればマーケットが活性化し、巡り巡って自社のメリットにもつながるという判断があったからです。レアケースですが、あくまでビジネス上の戦略でしょうね。

高畑好秀

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