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内田篤人のケース 
日本代表1/23のボディメンテナンス術

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仕事をする前、また大事な人と会う前、疲れた顔で出かけたくはないもの。どんなときでもフレッシュで輝いた自分を見てもらいたい。そんな状態をちょっとしたセルフケアで手に入れることができる「トリガー・セラピー」をご存じだろうか。鹿島アントラーズの元チームトレーナー・小池謙雅氏が施すこのセラピーは、心身のリラックスだけでなく、魅力的に見せるヴィジュアルアップ効果も期待できるケア技術。第3回目は、サッカー日本代表・内田篤人選手が試合前にメンタルの切り替えで使っていたフェイスセラピーをピックアップする。

甘いマスクの代表サイドバック
その成長を見守り続けて

2014FIFAワールドカップ・ブラジル。日本は残念な結果に終わりましたが、私はとても充実感を感じていました。そう書くと、「日本が負けて嬉しいのか」と言われるかもしれませんが、そうではありません。もちろん私も悔しかった。

充実感を感じていたのは、ひとりのプレーヤーの成長についてでした。そのひとりとは、日本代表不動の右サイドバックとして、そのプレーで、背中でチームをけん引してきた内田篤人選手です。私と内田選手の出会いは、2007年に私がトレーナーとして鹿島アントラーズへ入団してからでした。

当時、彼は既に鹿島の主力として活躍。彼は静岡県の強豪校である清水東高等学校を卒業後、2006年のJリーグ開幕戦では鹿島アントラーズ史上初の高卒ルーキーでのスタメン出場を果たし2年目以降の活躍がさらに期待されていました。

同年にはクラブ史上最年少得点を挙げ、当時の高卒ルーキーの史上最年少得点記録も打ち立てています。さらにJリーグオールスターサッカーではディフェンダー最多得票で史上最年少出場を果たすなど、ルーキー時代から圧倒的な存在感を見せつけていました。

実は甘えん坊な一面も
ドイツに渡る前の不安要素

2010年に入り、ドイツ・ブンデスリーガのシャルケ04へ3年契約で完全移籍すると、間もなく右サイドバックのレギュラーに定着。クラブ史上初となるUEFAチャンピオンズリーグベスト4へと導きました。

この快挙にはサッカーが好きな人はもちろん興奮をしたでしょうし、メディアも大々的に取り上げましたね。なにせチャンピオンズリーグ準決勝のフィールドにレギュラーとして立った日本人は、内田選手が初なのですから。

ルーキー時代からその実力は折り紙つきでしたが、名門・鹿島でもまれて、サイドバックとしては国内でもトップクラスに君臨するほどに成長していました。しかし、その時点で内田選手はまだ20代前半。成長盛りのときでしたので、ドイツでもっと伸びる、もっと逞しく鍛え上げられると誰しもが思っていたでしょう。

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ただ、彼を身近で見ていた私としては少し心配なところがありました。実はそれ以前に彼が一度「小池ちゃん、一緒にドイツへ行ってよ」と私に持ちかけたことがあります。それは半分冗談であり、半分本気だったと感じていました。現地のトレーナーでは心配なのだろうか、そう考えもしました。

これを書くと叱られてしまうかもしれませんが、内田選手は、しっかりした青年である一方で、とても人見知りで、甘えん坊な一面があったからです。今でこそクールで常に冷静なイメージが彼を取り巻いていますが、動物に例えると猫のようなもの。自分の居心地のいい場所や相手をいつも渇望していたのです。

敗戦を糧に、また一歩前へ
内田篤人は新たなステージへ

私は彼がドイツへ渡る前に、ふたりきりで食事をしたことがあります。そのときの彼は、以前とは打って変わり、覚悟を決めていました。「誰も自分を知る人のいない場所で、ひとりでやりたい」と。選手として成長できるならば、甘えを捨て、ひとりきりで自分を磨き上げたいと彼は宣言しました。

世界中から有望な選手が集まるブンデスですから、鹿島以上に激しいポジション争いがあったことでしょう。また対戦する相手もワールドクラスばかりなので、同じサイドバックでも簡単にはいかなかったことでしょう。2011-12シーズンは強力なライバルの出現があり、さらにはコンディション不良とケガに悩まされ、定位置を失いかけました。

彼の調子が下がったとき、私は彼にしていたセラピーをいつも思い出していました。メンタルのスイッチを切り替えるためのセラピーです。どんな選手でも、試合に入る前、独自のスイッチの入れ方を持っています。自分の好きな音楽をひたすら聞く選手もいれば、瞑想して内なる自分と会話する選手もいます。

内田選手の場合は、フェイスセラピーをすることでした。試合開始直前、「小池ちゃん、いつものお願い」と横たわります。セラピー中は目をつむり、気持ち良さそうにリラックスしていますが、一通り終えて私が「はい! 行っといで!」と声をかけると、「シャキーン!」という声を発しながら目を爛々と見開いたものでした。

現在、彼は今大会での敗戦を心の傷にしているかもしれません。しかし、また新たなチャレンジに向けて「シャキーン!」と気持ちを切り替えて走りだしてほしい。そんな祈りを込めて、また彼へのリスペクトの証として、私が彼によくやってきた「トリガーフェイス」をご紹介しましょう。顔をすっきりとさせ、むくみを取り、気分をチェンジできるセラピーです。

エンリッチ編集部

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