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仮想通貨の世界 2/4

資産デザイン研究所代表の内藤忍氏が、各界のプロフェッショナルをお招きして、資産運用にまつわる旬のトピックを取り上げる、本連載。5月は株式会社bitFlyerの加納裕三代表取締役とともに、ビットコインをはじめとする仮想通貨について対談を行っている。(1/4回から読む)ーーー

中央銀行が管理をしない
新たな概念のもとに生まれた

内藤 仮想通貨という呼び名からもわかる通り、ビットコインは円やドルと違って、手に取って目に見える姿や形がありません。

加納 「通貨」「コイン」ということからもイメージできますが、ビットコインは「お金」であることに変わりはありません。ですから、円やドルのように通貨の単位があり、それは「BTC」と表記され、1円や1ドルのように、1BTCと数えることができます。

ただし、通常の通貨のように姿かたちはなく、「B」と書いてあるコインが存在するわけでもなく、あくまでも「仮想」の「通貨」だということになります。当社のような取引所を通せば購入することができ、5月初旬時点であれば、1BTC=約16万円というレート。需給のバランスによって取引価格は変動し、1日に1~10%の変動はザラです。これを目的に、投資対象としてビットコインを取引するケースもたくさんあります。当社としても、個人同士で発注・取引を行うプラットフォームとして、「bitFlyer lightning」のサービスを提供し、このうち「Lightning FX(ビットコインFX)」「Lightning Futures(ビットコイン先物)」では最大15倍のレバレッジ取引ができます。今後は、FX専業会社でも、「ビットコイン/円」というように、取引通貨ペアにビットコインが加わる可能性は高いでしょう。

内藤 仮想通貨としてイメージしやすいのは、オンラインゲーム内の通貨であったり、特定のウェブサイトのみで使えるモノもあります。前者であれば、円を支払い、ゲーム内の通貨を手に入れればショップでアイテムを買えますし、後者なら利用登録時にポイントを購入して、有料サービスを購入するという仕組みです。これらと、ビットコインは何が違うのでしょうか。

加納 特定のゲームやウェブサイトでのみ使える仮想通貨は企業単位で作っていて、利用者を囲い込むことで運営主体が利益を上げるのが目的です。

一方、ビットコインは国家単位で運営されている円やドルと同じく、経済活動を円滑に進めるのが目的。世界中で日常生活に使えるようにすることを目指して作られていて、紙幣や硬貨はありませんが、パソコンやスマホをお財布代わりに、モノやサービスの売買ができるようになっています。

内藤 パソコンやスマホで決済する手段としては、電子マネーが普及していますが、これとも異なるのでしょうか。

加納 仮想通貨と似た概念であることは間違いありません。そもそもビットコインは形として存在しない仮想通貨ですから、電子マネーとして使うこともできます。

ところが、一般的な電子マネーは、日本であれば円というように、その国や地域で使われている通貨を電子的に決済するために存在していて、実態としては円という通貨をやり取りしていることに変わりなく、他の国で日本の電子マネーを使うことはできません。

他方、ビットコインは何らかの端末に円をチャージするわけではなく、仮にビットコインで商品を購入するには、手持ちの円をビットコインに両替するのが決まりです。それこそ、当社のような仮想通貨交換業者を通じて替えてはじめて、ビットコインでの支払いが実行できます。要は、ビットコインは円やドルと同じく「通貨」であり、貨幣を使わないで決済をする電子マネーという「仕組み」とは異なります。

内藤 新たな通貨として捉えれば、ビットコインに対する理解も深まります。仮想であるという点を除いては、個人間や企業間を問わず、モノやサービスの対価として使うことができるわけですね。

加納 その通りです。ビットコインに対応している店舗であれば決済に利用でき、消費者は支払うことで手持ちのビットコインが減り、店舗は受け取った分増えるという仕組み。一般的なお金と変わりません。

ただし、円やドルとの決定的な違いは、通貨を管理する「中央銀行」の存在がないということです。ビットコインには発行を司る組織や流通を管理する組織がありません。国家や企業が運営する仮想通貨ではなく、どこの国も企業も、発行や流通に関与していないというのは、ビットコイン最大の特徴です。

内藤忍

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