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仮想通貨の世界 2/4

内藤 国や企業が管理していないとなれば、誰がビットコインを発行・流通を管理しているのですか。

加納 コンピューターのネットワークを利用して管理しています。ビットコインにおける新しい通貨の発行や取引の詳細情報は、そのすべてがコンピューターネットワーク上に分散されて記録・保存される仕組みで、いうなれば、ひとつの大きな取引台帳があるとイメージすれば良いでしょう。この可視化された記録があることで通貨の偽造や二重払いが防止でき、記録は残りますが個人情報は含まれません。あくまでも、ビットコインの流通の整合性を保証するために存在します。

内藤 特定の組織のもとではなく、分散されたネットワーク上にひとつの大きな台帳を置くことで中央管理を不要とするわけですね。

加納 取引の整合性を保証するための台帳なのに、分散保存されていたら、記録に不整合が発生するのでは、という声もありそうです。実際、保存されている取引台帳のデータと、追記の対象機関に発生したすべての取引データの整合性を取りながら正確に記録するのは大変なこと。こういった作業はコンピューターによる計算で実現できますが、膨大な計算量が必要にもなります。

そこでビットコインは、この追記作業に有志のコンピューターリソースを借りることにしました。余っているコンピューターの計算能力を活用することで膨大な計算を行い、共有するひとつの取引台帳に追記を行うのです。

そして、この追記作業を手伝った人、膨大な計算処理を行い、結果として追記処理を成功させた人に、見返りとしてビットコインを支払います。また、この報酬は新たに発行されたビットコインによって支払われるので、通貨の新規発行はこの瞬間に起こるのです。この新規発行に至る行為は「採掘(マイニング)」と呼ばれ、コンピューターの計算能力をお金に変えるビジネスとして、マイニングに取り組む人々が世界中に存在し、これによりビットコインの安全性は担保されています。

なお、通貨としてのビットコインの新規発行はマイニングを通じてしか行われず、発行量は調整されています。ビットコインの発行総量も事前に決まっていて、2140年までに2100万ビットコインとされていて、以降は新規発行されません。インフレや混乱を避けるため、このように設計されました。そうすると、作った人はいない、誰も管理しない、上限が決まっているという点で、ビットコインはゴールドに近いのかもしれません。

内藤 なるほど、仮想の貴金属とイメージしてもわかりやすいですね。

ーーー紙幣や貨幣がない通貨であるビットコイン。国や企業は関与せず、コンピューターネットワーク上で運営管理されているのが特徴だ。では、これによるメリットは何だろうか。次回はこれらについて触れよう。


加納裕三(かのう・ゆうぞう)

株式会社bitFlyer代表取締役
1976 年生まれ。2001 年に東京大学大学院工学系研究科修了後、ゴールドマン・サックス証券にてエンジニアとして自社決済システムの開発を行う。その後デリバティブ・転換社債トレーダーとして機関投資家向けマーケットメイク、自己資産運用等を行う。
2014 年 1 月に株式会社 bitFlyer を共同設立。
日本ブロックチェーン協会(JBA)代表理事。

内藤 忍 (ないとう しのぶ)

株式会社資産デザイン研究所代表取締役社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、金融機関勤務を経て1999年にマネックス証券の創業に参画。同社は、東証一部上場企業となる。その後、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役などを経て、現職。著作は40冊以上。2015年には銀座に「SHINOBY`S BAR 銀座」をオープン。無料のメールマガジン「資産デザイン研究所メール」は購読者が約47,000人という人気

連載コラム

内藤忍

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