ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

日頃の言動からお金儲けのゲームは始まっている

エンリッチrichmind5-2

*2015年10月8日掲載。再構成してお届けします。

究極的に考えると、お金は、もっとも多くの人が満足するサービスを提供できた人のところに集まってくる。結局のところお金儲けとは、どれだけ他人を喜ばすことができるのかというゲームなのである。このゲームの勝敗は、日頃の言動でかなりの部分が決まってくる。(「富裕層の振る舞い」初回から読む

「先日は失礼しました」が言えない人

よく言われていることだが、ビジネスの世界において、顧客とのトラブルは大きなチャンスでもある。トラブルをきっかけに、相手との関係が親密になるというのはよくある話だ。筆者も、相手に迷惑をかけたことをきっかけに関係が深まり、最終的には大きな仕事につながったという経験が何度もある。お金を稼ごうと思っている人にとって、トラブル対応は、むしろ積極的に取り組むべき課題といえる。

しかし、現実にはこのチャンスを生かすどころか、ドブに捨ててしまっている人が大勢いる。これは本当にもったいないことである。

筆者は以前、ある不動産取引の件で、不動産会社の営業マンを叱責したことがある。営業マンの完全な不注意で取引の日程が大幅に狂ってしまい、筆者は大変な思いをしたからである。こういうことはよくあることなので、筆者としては、織り込み済みで、実はそれほど怒っていたわけではなかった。

だが、ここはシビアなビジネスの世界。何でも甘い顔をするわけにはいかない。筆者は、営業マンの不手際についてメールで指摘し、次からはそのようなことがないよう徹底して欲しいと伝えた。

重要なのはその後だ。後日、打ち合わせに来社したその営業マンは、何事もなかったかのように、実務的な話をスタートした。筆者は即座に「ああ、この人は稼げない人だな」と直感した。

筆者も人間なので、相手を叱責するのはあまり気分のいいものではない。先方の責任とはいえ、多少は後ろめたい気持ちもある。そのような状況で、次のミーティングの冒頭、「先日は大変申し訳ありませんでした」「今後ともよろしくお願いします」という言葉があれば、どれだけ気分がいいだろうか。

営業マンにとっては、メールで謝ったのだから、もう済んだ話なのかもしれない。まったくその通りで、事務的に物事を考えれば、次回のミーティングの冒頭で謝罪の言葉を述べる必要はない。だが人間とは、心理に左右される動物である。こうしたちょっとした行動の有無によって、相手からの信頼度は大きく変わってくる。

こうした対応の仕方については、様々な考えがあるだろう。だが、ちょっとしたことを実行すれば確実に有利であるとが分かっていることについて、あえて実行しないというのは、合理的とはいえない。

加谷珪一

Return Top