ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

将来のために今、我慢をしない

エンリッチ kaya1709-1

将来のため、今、我慢をすることは重要だとされている。特に日本の場合、小さい頃から、将来のために、今、ガマンしなさいと繰り返し教育されてきたはずだ。

確かに後先考えずに散財したり、将来に向けた努力を放棄するというのは愚かな行為である。だが、今、ガマンするという行為も、行き過ぎてしまうと、同じ結果をもたらしてしまう。学校教育に忠実だった人ほど陥りやすい罠といえるのだが、世の中のお金持ちたちは、総じてこうした束縛から自由である。

金融理論を学べば、
10年以上先を考えることが
非合理的であると理解できる

今ガマンすべきという画一的な発想のよくない点は、この考え方のベースになっている前提条件が極めて脆弱であり、行動を起こさないことのリスクがまったく考慮されていないことである。

やることがあらかじめ決まっていて、その手順さえ守っていれば、一定の報酬が保証されるという環境においては、その切符を手にするまで、ガマンを重ねるというのは、それなりに意味があるだろう。昭和の時代までなら、こうした考え方をしていれば大きく間違うことはなかったかもしれない。

だが、この価値観の最大の落とし穴は、ルールが変化しないことが、無意識的に大前提になっていることである。与えられた環境が何らかの理由で、途中で変化してしまう可能性が考慮されていないのだ。

世の中では常にイノベーションが起こっており、同じ経済環境や社会環境がずっと続くという保証はない。大きな変化はそうそう起こらないが、それでも、常に変化が発生することを前提にしなければ、成果を上げ続けることは難しい。

ガマンする教育に慣れきってしまった人は、無意識的に、同じ環境が続くことを前提にしてしまう傾向が顕著である。しかも、本人がそれを意識していないので、状況はますますやっかいだ。

同じ状況が続かないという現実は、金利を見れば一発で理解することができる。

債券などの金利は、基本的に期間が長くなればなるほど高くなる。長期になるほど不確実性が高まるので、金利はそれを織り込んで高くなるというのが一般的な解釈である。10年くらいの期間までは、期間に比例して順調に金利は上昇していくが、20年、30年という期間になると、思ったほど金利は上昇しない。

その理由は、20年や30年先のことをについて分析することは事実上不可能だからである。

世の中はだいたい10年くらいのスパンで大きな流れが変化する。20年先、30年先を予想することは、現実的に不可能であり、金利もこうした状況を反映して一定以上には上がらない。

加谷珪一

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