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将来のために今、我慢をしない

お金を失いたくなという感情は
想像以上に行動に影響を与えている

そうなってくると、20年も30年も先のことを予想して我慢するというのは、極めて非合理的な行動であることが分かる。仮に将来に備えて我慢することを是とした場合でも、それは10年先にやってくる新しい時代に備えるためのものであって、それより先の将来を保証するものではない。

今、我慢することばかりにとらわれている人は、一見、慎重で冷静に見えるのだが、実は変化というリスクを過小評価していることに気付いていない。たいていの場合、お金を失いたくないという感情が強すぎ、判断にバイアスがかかっている。言い方は悪いが、感情のコントロールを失っているという点においては、後先を考えず消費する人と大して変わらないのだ。

人間は、感情に左右されてしまう動物なので、どうしても直感や思い込みで行動してしまう。だが、これに対してどう向き合うのかで結果は大きく変わってくる。

投資の世界には、大きな利益を得るためには、大きなリスクを取らなければならないという絶対法則がある。これはどの金融工学や投資理論の教科書にも書いてあり、いわば常識といってよいものである。いかなる投資理論を駆使したところでこの法則から逃れることはできない。

しかし、現実の投資の世界では、この絶対的な基本原則がことごとく無視されている。ここで取り上げたような、将来のために今を過剰に我慢するタイプの人に、理論を無視した暴走が見られるのだ。世の中には安全そうに見えて実はリスクの高い金融商品がたくさんあるのだが、こうした商品に手を出してしまうのは、このタイプの人が多い。

過剰な我慢から自由な人は、リスクに対しても自然体で付き合うことができる。結果として、過剰なリスクを取ることもなく、大事なチャンスを逃すこともない。

*この記事は2017年10月に掲載されたものです

 

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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