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The Style Concierge

$38,115,000 
フェラーリのクラシックカーはなぜ高い

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前回はフェラーリが世界最高の中小企業であるという“フェラーリ数字”のミニマム側を取り上げたが、今回はその反対の少し景気のよいお話をしてみたい。

クラシックカー・オークション・イヤーブック(Historica Selecta刊 問い合わせ:EKKO PROJECT contact@ekko.jp)の最新版が完成した。クラシックカー界のオーソリティーであるイタリア在住のアドルフォ・オルシJr(ペブルビーチやヴィラ・デステなど著名コンクールデレガンスのジャッジを務める)は世界中のカーオークションにおける出品・落札データをまとめた年鑑を20年来刊行し続けている。

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今年の最高落札価格を獲得したのはフェラーリではなかったが、トップ10や、100のリストを眺めてみるなら、フェラーリだらけなのがわかる。当然、最高落札金額の世界記録を保持するのもフェラーリだ。

2014年北米モンタレーで行われたオークションにて落札された1962年製のフェラーリ250GTOが持つなんと、$38,115,000(約39億円)がそれである。現在ブームと言われるクラシックカーの世界においてもフェラーリが圧倒的な強さを表しているのだ。

「落札の総額は2014年あたりのピークと比較すると少し落ち込んでいるものの、落札平均価格はピーク時を維持しています。つまり、価値のあいまいな個体はシビアに評価されるのに対して、誰もが価値を認めるトップ・オブ・ザ・トップはさらに市場での存在価値を高めているのです。そういった観点からしてもフェラーリは圧倒的です。投資的な目的でもリスクが低いと評価されています。」とオルシは語る。

「落札の総額は2014年あたりのピークと比較すると少し落ち込んでいるものの、落札平均価格はピーク時を維持しています。つまり、価値のあいまいな個体はシビアに評価されるのに対して、誰もが価値を認めるトップ・オブ・ザ・トップはさらに市場での存在価値を高めているのです。そういった観点からしてもフェラーリは圧倒的です。投資的な目的でもリスクが低いと評価されています。」とオルシは語る。

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世界最高価格で落札されたフェラーリ250GTO

今や株や絵画、不動産と並ぶ資産価値を世界中で認められているクラシックカーだが、その一つの理由としてオークションを司るオークションハウスが大きく力を持ってきたことが挙げられる。個人間や、ブローカーによってクローズドで行われてきた取引が、一気にオープンになったのだ。今まではクラシックカーを入手することに、かなり大きなリスクが伴った。怪しげなブローカーに騙され、偽物を掴まされはしないかビクビクしながら交渉を進めなければならないし、お金を払ったはいいが、届いたコンテナを開けて見るならクルマとも思えぬ鉄くずだったというようなエピソードは幾らでもあった。その道のプロですら騙されるようなリスキーさだったから、とても売買を楽しむどころではなかった。ところが近年はオークションハウス達がしっかりと情報を公開する。

たとえば先日、日本の岐阜の納屋にて発見されたというフェラーリ365GTB/4通称デイトナだが、それが1969年にデリバリーされたファーストオーナーの名前から、日本へ1971年にスーパーカーブームでしばらく後に有名になるシーサイドモーターが輸入し、岐阜近郊で3名のオーナーの元を転々とした、などという詳しい情報がオークションハウスによって開示されている。

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岐阜の納屋で発見されたフェラーリ365GTB/4(通称デイトナ)

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個体のコンディションから、エキスパートによるオリジナリティの鑑定などの情報に誰でもアクセスすることができるのだ。加えて、“このくらいの価格で買えますよ”、という予想落札価格までご丁寧に知らせてくれる。ちなみにこのデイトナの場合、予想落札価格は1.8億~2.1億円で、最終的には、その金額を上回る2.3億円で落札された。

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つまり、オークションを利用したクラシックカーの取引の比率が大きくなり、オークションハウスが、クラシックカーの相場を作るようになってきたのだ。

また、世界の名だたるクルマのイベント、コンクールデレガンスなど、“好きモノ”が集まる場にて頻繁に開催されるオークションはその敷居も低くなり、白熱した入札合戦を楽しむという“観戦エンターテインメント”としても人気だ。その場に行けない顧客の為にネットにおいてリアルタイムで中継され、電話による代理入札も簡単に行われる。ほんの少し前までは、人間関係に基づいたローカルな情報網を頼りに密室で行われていたクラシックカーの売買は大きく変貌を遂げ、世界規模のマーケットとなってきたのだ。だから、取引が透明化され、売買のリスクが減り、より多くのユーザーが関心を持つようになった。付け加えるなら、世界のいたるところでコンクールデレガンスやクラシックカーだけが参加できる公道ラリーが実施され、クラシックカーを所有する楽しみがより広まっていることも大きな理由のひとつである。

エンリッチ編集部

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