ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

中古価格残存率 70% VS 22%
~フェラーリV8とV12~

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2018年を迎えて、私の周りのクラシックカー&ハイパフォーマンスカー業界はさらにヒートアップしているように感じられる。オークションもペブルビーチ・コンコースなどと併せてルーティンに開催されるモノに加えて、続々と新規開催も企画されている。クラシックカー・オーナーを対象とした公道ラリーやコンコース・デレガンスなどの案内もひっきりなしにメールボックスへ飛び込んでくるのだ。沈静化するとも予測されたクラシックカー・ブームだが、全体を俯瞰するならば、よほど大きな経済的変動でもない限り、関心は増す一方ではないだろうか。

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一般的に生産されてから25年を経た車両をクラシックカーと称すという標準的なルールはあるが、それはあくまでも数値的な指標に過ぎない。より新しい製造年月日を持ちながらもクラシックとしての風格を保っているものもある。私も、オーナーがそれをクラシックと思えばそれでいいのではないか、と思う。昨今は、とかくクラシックカーの投機的側面ばかりが強調されるが、その楽しみ方にはたくさんのバリエーションがあることをもう一度、考えるべきではないかと2018年を迎えて思うのだった。

アバルトや空冷ポルシェ、そして、もちろんフェラーリなど、リーマンショック以降の少し人為的とも言える急激なマーケットプライスの高騰は確かに現実として目の前にある。しかし、そんなブームとは裏腹に、お手頃な価格でエンスージアストにアピールする魅力的なクルマ達も多数存在する。

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ロータス ヨーロッパ

伝説の人、コーリン・チャップマンの病的とも言える程のスポーツカーへの拘りから生まれたミッドマウントエンジンのライトウェイト・モデル ロータス ヨーロッパ。これが200万円代で手に入れることができるというのもひとつの現実だ。フィアットの汎用エンジンとシャーシをベースとしたアバルトの市場価格と比較すると桁が一つ違う数字だ。クラシックカーの価格は希少性が支配する、という大原則をよく考えてみたい。少し価格帯は上がるもののロータス・エランも同様であるし、時代はよりモダンとなるがロータス・エスプリもその範疇にいる仲間達だ。

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ロータス・エスプリ

さて、少し長くなった前置きに続いて本題へと入ろう。今回は前述したような“陽の当たるクルマと、当たらないクルマ”の差がフェラーリの中にも存在する、というお話だ。

基本的にフェラーリはクラシックカー相場の王様であると同時に、モダンカーでもリセールバリューが高いことが大きな特徴だ。一般のメーカーでは、数千万円を支払って手に入れた新車も、走行距離や事故の有無、ボディーカラーなどにもよるが、一般的には購入後1年もすれば下取りや買い取りに出すときに付く値段は新車価格の半分以下になってしまう。そして、その後も価値はどんどんと下がり続ける・・・。ところが、フェラーリにはこの中古車業界の「常識」が通用しない。一般的な車と比べて、明らかに下取り・買い取り価格の低下が緩く、時には希少性から中古車の価格が新車を上回ることもある。

特にV8ミッドマウント・カテゴリー、フェラーリF430(2005年)発売の頃はITバブルの絶頂期でもあり、車両価格の高騰にも関わらず注文が殺到した。納車は2年待ちとも3年待ちともいわれたが、常識的に考えて3年も待てば普通のクルマであれば次のモデルが出てもおかしくないほどの途方もない長期間だ。であるから、どうしても手に入れたい顧客は中古車ショップやブローカーに割高でもよいのですぐに持ってくるようにと申し入れた。ショップの買い取り価格も急上昇し、当然、市場価格は定価を上まわる。フェラーリにとって特別な限定車でなくても、新車より中古車が高いという現象はざらに起こり得るのだ。

しかし、このような環境を作りあげられるのはフェラーリならでは、ということを忘れてはならない。かつてよりは少し短いものの、モデルチェンジの周期が長く、年間の販売数量を限定し、希少性を高めるブランディング戦略を採っているからこそ、中古価格があまり落ちないのだ。その背景にはフェラーリのF1における話題作りやクラシックカー戦略など、涙ぐましい努力があって、このリセールバリューが維持されているのだ。

元々、値落ちが少ないフェラーリをうまいタイミングで下取りに出していけば、一般の人が想像するよりはるかに少ない出費でニューモデルに買い換えていくことができる。そういったオーナーは、賢く最新のV8フェラーリを所有し続けている。しかし、それはフェラーリの楽しみ方のほんの一部に過ぎない。

エンリッチ編集部

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