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【63】新興国プレビルド物件の出口戦略とは?

資産デザイン研究所代表の内藤忍氏が、資産形成にまつわる悩みや質問に答える、本シリーズ。不動産投資と言えば、新興国のプレビルド物件は定番のジャンル。とはいえ、リスクはないのでしょうか。内藤氏に尋ねてみました。ーーー

新興国プレビルド物件の出口戦略とは?

Q(質問者):不動産は「出口戦略」が大切だと良く聞きます。ASEANなど新興国のプレビルド物件への投資は将来の売却が不安ですが、内藤さんのご意見を聞かせてください。

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A(内藤氏):不動産は出口(売却)によって、初めて投資の収益性が確定します。インカム収入が入ってきても、売却時に損が出てしまうとトータルの保有期間利回りが期待したほどにならないからです。

新興国の不動産に関して言えば、最初のコンドミニアムが完成してからまだ数年程度しか経っていない国も多く、5年後、10年後の売却に不安を感じている投資家の方もいるのだと思います。

建物に関しては経年劣化が進みますから、メンテナンスが必要になってきますが、新興国の場合、日本のような修繕積立金によって準備をするといった慣習がまだ広がっておらず、大規模修繕が必要になった時点で想定外の支出が求められるリスクがあります。日本と気候も異なり、どの程度の修繕をどの程度のスパンで実施すべきか、わからないケースもあるでしょう。

とはいえ、修繕がきちんと行われないと劣化が進み、建物価値が下落して買い手が見つからないといった最悪の事態も想定されます。

よって、こと新興国の新築物件は定期的に管理状況や建物の経年劣化の状況をモニタリングして、場合によっては10年以内に売却するといった対策を取ることも検討したほうが良いでしょう。現地の管理会社に連絡を取りながら、写真や動画、あるいは自分自身で現地を視察して状況把握をしておくべきです。

もちろん立地がよく、管理状態が良好であれば新興国でも10年、20年と価値を失うことの無い優良物件も存在します。フィリピンのマニラにはそのような物件が実際に存在します。

新興国の不動産は、物件によるバラツキが大きく、また先進国の不動産投資のような歴史がありませんから、将来の見通しについては不透明な部分があるのは事実です。

経済成長による恩恵を長期では受けられるのが新興国投資の魅力ですが、市場全体の成長と個別物件の状況を分けて把握することが重要だと思います。

内藤 忍 (ないとう しのぶ)

株式会社資産デザイン研究所代表取締役社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、金融機関勤務を経て1999年にマネックス証券の創業に参画。同社は、東証一部上場企業となる。その後、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役などを経て、現職。著作は40冊以上。2015年には銀座に「SHINOBY`S BAR 銀座」をオープン。無料のメールマガジン「資産デザイン研究所メール」は購読者が約47,000人という人気

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