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2019年 新春特別編 3/4

資産デザイン研究所代表の内藤忍氏が、各界のプロフェッショナルをお招きして、資産運用にまつわる旬のトピックを取り上げる、本連載。1月は「2019年新春特別編」をお送りしているが、今回は不動産投資における「1棟1法人スキーム」に内藤氏が警鐘を鳴らす。(1/4から読む)ーーー

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非常にリスキーな「1棟1法人スキーム」
融資の厳格化に伴い問題になる可能性

金融機関の不祥事が影響し、融資が厳格化していると前回お伝えしましたが、これに伴い表面化しそうなのが、国内不動産投資における「1棟1法人」のスキームです。

まず、通常のアパマン経営であれば、個人が区分や1棟物件を買い進めたり、最初は個人で始めたものの保有物件が増えたので法人化するケースは珍しくありません。この場合は「複数の1棟物件を個人もしくは1法人」で持つことになります。

対して1棟1法人は、物件を購入するごとに新しく法人を設立し、その事実を隠したまま各法人が異なる金融機関から借り入れを行います。仮に10棟のマンションを所有していれば、個人が10の法人を持って同数の金融機関と付き合うことになりますが、それには以下のようなメリットがあるからです。

ひとつは、借り入れが法人名義になるということ。個人でアパートローンを使って物件を買うと、2棟目以降は与信を使いきっていることがあり、融資を受けられない可能性があります。ところが1棟1法人は1棟ごとに法人を設立して、個人ではなく法人で借り入れを行うので、本来の借主である個人の与信枠を使わずに融資を受けられ、法人で借りることで個人の与信以上に融資も受けられますから、2棟目や3棟目の投資を進められることになります。かつ、借り入れの履歴は個人ではなく法人に紐づいているので、各金融機関はお互いに参照できません。銀行などの担当者も、まさか、個人が複数法人を持って融資を受けているとは考えないのです。

よって、1棟1法人のスキームは個人で不動産投資を行うよりスピーディに投資規模を拡大させることができ、かつ条件に合えば消費税の還付も受けられるなど、いくつかメリットがあるようです。

ただし、このスキームは金融機関に虚偽の申告をしている、悪質な手法といえます。そもそも、与信に上限があるのは、借主の返済の延滞・不履行を防ぐためであり、必定以上のリスクを負わないため。それにも関わらず、物件を買うたびに法人を設立して過剰な融資を受けるのは、とても危険な行為と言えます。

内藤忍

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