ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

ポイント活用の多様化 1/3 

ポイ探の菊地崇仁氏が、エンリッチ読者のライフスタイルにマッチするクレジットカード、あるいはポイントサービスの付加価値を見出す本連載。今月は、ますます広がるポイント活用の最前線をレポートする。———  

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エンリッチ読者の皆さま、ポイ探の菊地です。前回は、三井住友カードがリリースした、完全ナンバーレスの「三井住友カード(NL)」を取り上げました。近年、カード各社は専用端末にカードをかざして支払いをする「コンタクトレス決済」の普及を進めています。これに伴いクレジットカードを財布などから取り出す機会は増えるでしょうから、カード番号やホルダー名、セキュリティ番号の盗み見を防ぐ手段として、個人情報を排したカードの普及を進めているのでしょう。こうした取り組みは他にも広がっていくのだと思います。

マネックス証券とアプラスによる「マネックスカード」や、リクルートによる法人・個人事業主向けの「Airカード」についても紹介しました。証券会社とカード会社のコラボはここ数年で一気に増え、ポイント運用やポイント投資として好評を博しています。また、ビジネスカードの市場はこれからで、カード会社にとってみれば金の鉱脈。今後も、新たなサービスが登場しそうですから、都度、紹介したいと思います。

ZホールディングスとLINEが経営統合
LINE PayはPayPayに一本化されることに

かねてから発表されていたZホールディングスとLINEの経営統合が、3月1日に完了しました。これにより、2022年をめどにLINE PayはPayPayに一本化する見通しです。また、全国に300万か所あるPayPay加盟店のうち、店頭のバーコードを読み取り決済するユーザースキャン方式の店舗では、4月以降にLINE Payでの支払いができるようになります。おそらく、PayPayは3月28日まで最大20%還元のキャンペーン、LINE PayはLINEクレカ(Visa LINE Payクレジットカード)の新規入会とLINE Payへの「チャージ&ペイ」の利用などの条件達成で最大7000ポイントのLINEポイントを付与するキャンペーンを3月下旬まで展開していて、これを終えてから実施したい考えだと思います。

ユーザーにはどんな影響があるか考えてみました。現在、LINE PayはLINEアプリから起動、もしくは単独のアプリで提供していますが、これがPayPayに切り替わるでしょう。LINE Payに比べるとPayPayの加盟店の数は多いので、そういった点でLINE Payユーザーは恩恵を受けると思います。

一方で気になるのは、ポイントシステムやロイヤリティプログラムの統合です。現状、LINEでは過去6カ月間のポイント獲得量に応じてマイランクが変動する「LINE POINT CLUB」を提供していて、マイランクに応じて、LINEクレカをLINE Payの支払方法に登録する「チャージ&ペイ」のポイント還元率が1(レギュラー)~3%(プラチナ)付与される仕組み。LINEクレカの利用でもポイントが3%還元される大盤振る舞いを実施しています。

ところが5月1日以降はサービスが改訂され、チャージ&ペイ利用時のLINEポイント還元率は一律0.5%になり、カード利用の還元率も一律2.0%になります。ユーザーからすると、残念な改定と言えるでしょう。

なぜ、こういった施策が取られるのか。LINE Payは将来的になくなりますから、PayPayをはじめとする他サービスと還元率競争をする必要は、もはやありません。LINEからすると、余計な出費はいまのうちから抑えたいと考えたのでしょう。

なお、PayPayの基本還元率は0.5%で、前月に50回以上利用すると翌月の還元率は+0.5%アップ、また利用金額が10万円以上だと+0.5%アップする3段階の仕組みで、合計還元率は1.5%になります。LINE Payもこれに合わせた格好だと思います。むしろ、LINE Payは一律0.5%になるので、これまでポイント還元率アップのためにLINEクレカを持った人からすると、その恩恵がなくなってしまいます。もちろん、カード利用の還元率は下がるとはいえ2.0%と高水準なので、5月以降はLINE Payに紐づけるというよりは、通常利用に重きをおいたほうがよさそうです。ただし、来年以降にLINE Payが統合された後、LINEクレカはどういう扱いになるのかも気になるところです。

そして、統合された後に残る主要なコード決済は、d払い、au PAY、PayPay、楽天ペイの4種類になります。これらに共通するのは、キャリア系のサービスだということです。2022年以降は、携帯キャリアがコード決済の分野をけん引するのではないでしょうか。いずれのサービスでたまるポイントは使い勝手がよい反面、サービスが集約されることで市場の競争原理が働かなくなる可能性もあり、どうなっていくのか状況を見守りたいと思います。

———LINE Payがなくなることで、4つの主要サービスに集約されるコード決済のサービス。ポイント還元率やクレジットカードとの連携はどうなるのか、気になるところだ。そして次回からは、近年におけるポイント活用事情を紹介しよう。

菊地宗仁_300

菊地 崇仁 (きくち たかひと)

株式会社ポイ探 代表取締役。大学卒業後、日本電信電話株式会社(現NTT東日本)入社。システム開発に携わる。2002年の同社を退社後、友人と共に起業。ポイント交換案内サービス・ポイ探の開発に携わり、2011年代表取締役に就任。現在All About、カカクコム、ECZine、日経トレンディネットへ記事を提供する他、テレビ・雑誌でも活躍中。著書に「新かんたんポイント&カード生活 (自由国民社)」、「できるAmazonスタート→活用 完全ガイド(インプレス)」他。

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菊地崇仁

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