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一気に実用化に近づきつつある自動運転車

メルマガ限定 201701

自動運転車の実用化が現実的な段階に入ってきた。自動運転車の普及は、自動車業界はもちろんのこと、IT業界や保険業界、そして行政の分野にも大きな影響を与えることになるだろう。

日本はこれまで自動運転車について段階的な実用化を計画してきた。政府は「官民ITS構想・ロードマップ」を作成しており、2020年までの高速道路における自動走行と、限定地域での無人自動走行サービスの実現を目指す方針を打ち出している。それによると完全な自動運転車の普及は2025年頃になる見込みだ。

ところが、欧米ではこうした段階を経ずに、一気に完全自動運転を実現しようという動きが活発になっている。米フォード・モーターは昨年8月、ハンドルやアクセルのない完全自動運転車を2021年までに量産を開始すると発表し、関係者を驚かせた。また独BMWも米インテルと組み、同じく2021年までに完全自動運転技術を導入するとしている。自動運転技術ではグーグルの取り組みがよく知られているが、同社も2020年前後の完全自動運転実用化を目指している(一部では2017年中に自動運転タクシーをスタートさせるとも報道されている)。

もし米国勢がこのまま2020年頃に完全自動運転車を投入するという流れになると、日本勢は厳しい状況に追い込まれる。完全自動運転というものは、自動運転技術単体の問題ではなく、ITインフラ構築や制度設計の関係が密接である。この部分で米国勢が先行した場合、標準化という点で日本が不利になってしまうのだ。

一部からは自動運転はまだまだ未熟な技術であり、一足飛びの完全自動運転移行はリスクが大きいとの声がある。常識的に考えれば、段階的に自動運転レベルを上げていった方が安全に思える。だが、必ずしもそうとは限らないのが技術の面白いとことである。人が中途半端に介在するシステムよりも、最初から完全自動運転を前提にした方が、技術的難易度が低い可能性も出てきているのだ。

自動運転は技術レベルに応じて4つのカテゴリーに分かれている。レベル1は、加速・制動、操舵のいずれかの操作をシステムが行うというもので、レベル2になると複数の操作がシステムで制御される。レベル3では、原則としてすべての操作をシステムが行い、必要に応じてドライバーが対応する形になり、レベル4ではドライバーの関与が一切消滅する。日本では、まずレベル3を実現してからレベル4という段取りなのだが、レベル3における最大の課題は、人と自動運転を切り替えるタイミングやその手法と言われる。この部分をしっかり開発できないと、人と自動運転の切り換えタイミングで大きなトラブルを招きかねない。その点において、最初から完全自動運転が前提であれば、こうした問題は発生しない。

加谷珪一

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