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一気に実用化に近づきつつある自動運転車

段階を踏むのか、一気に自動運転にするのかという違いは保険の世界にも大きな影響を与える。自動運転車が普及することになった場合、大きな問題として浮上してくるのが事故の際の賠償責任である。現在の自動車保険は原則として、ドライバーに賠償責任があるという前提で商品が作られており、保険料の算定もそれがベースになっている。

自動運転の段階区分におけるレベル1からレベル2までは、運転責任がドライバー側にあるので、損害賠償についても従来と同じ考え方で問題なく、保険についても同様の仕組みが適用される。問題は基本的な運転動作が機械によって行われるレベル3とレベル4である。

レベル3では状況によっては機械から人に動作がシフトするが、保険業界では最終的な運行支配の権限はドライバーにあり、賠償責任はドライバーが負うとの見解を示している。保険会社の中には、すでに自動運転中の事故を対象にした自動車保険特約の提供を決めたところもある。一方、レベル4ということになると、これは完全に機械の責任となるので、自動運転車に乗った人物が賠償責任を負うことはない。最終的には、それを製造したメーカーが責任を負う可能性が高いのだが、だがそうなってくると、損保会社にとっては大打撃である。

自動車メーカーは巨大企業なので、自社で保険の仕組みを構築し、保険料は自動運転車の販売代金に上乗せするという仕組みを構築できる。すると、個人を相手にした自動車保険という商品が消滅してしまう可能性が出てくるのだ。

損害保険会社の売上高のうち自動車保険が占める割合は何と6割に達する。もし自動運転車の損害賠償責任をすべて自動車メーカーが負うという形になった場合、損害保険会社は売上げの大半を失ってしまうかもしれない。保険会社としては日本式の段階的な普及の方が有り難いだろう。

だが世界の潮流は、段階的導入ではなく、一足飛びの完全自動運転導入に傾きつつある。2020年まであと数年しか時間的猶予がない。自動運転車の普及は決して未来の話ではなく、すぐの目の前にある現実的課題なのだ。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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