ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

リスクの正しい取り方

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*2015年6月19日掲載。再構成してお届けします。

富裕層としての思考回路がもっとも試されるのは、やはり、リスクを取る局面においてだろう。大きなお金を稼ぐには、リスクを取らなければならないといわれているが、むやみやたらにリスクを取ればよいというものではない。正しいリスクの取り方をしないと、ただ損をするだけという結果に終わってしまう。危険なことをすることがリスクを取ることではないのだ。

リスクを取っていい場合とそうでない場合

リスクを取る時に考えなければいけないのは、取ったリスクに対して相応のリターンがあるのかという点である。お金持ちになれる人は、この部分の見極めが上手である。世の中には、リスクだけが高くて、リターンが少ない案件というものが少なくない。こうした案件に引っかかってしまうと、そもそも儲けることなど不可能である。

例えば、超一等地にある店舗でお店を開業するといった例がこれに該当する。

ブランドのある場所では、家賃が通常の経済合理性を超えて上昇することが珍しくない。体力のある企業が、自社のブランド力や知名度を高める目的で、採算を考えずに出店することが多いからである。

家賃が妥当な水準の1.5倍になっていたからといって、来客数が1.5倍や2倍になる保証はない。他の場所と比べて家賃だけが高くて、客の入りは同じということはよくあるケースなのだ。こうなってしまうと、普通の経済メカニズムに沿ったビジネスモデルで利益を出すことは極めて難しい。つまり、こうした案件においては、リスクとリターンが比例していないということになる。

別な目的があれば話は別だが、基本的にこのようなところで無理にリスクを取ってはダメということになる。

このほか、相手方に一方的に有利な売買契約になっていたり、ビジネスの相手としてふさわしくない人と組んでしまっているなど、自分が取ったリスクに対して、そもそも十分な期待収益が得られないというケースは多い。

まずは、自分が取り組もうとしている案件が、こういった非合理的な状況になっていないのか吟味するのが先決である。リスクとリターンがきちんと比例する案件なのかを確認できて初めて、そのリスクは取るべきなのか、回避すべきなのか判断することができる。

リスクを取る前の段階ですでに失敗してしまっている人が実は多いのだ。

加谷珪一

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