ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

リスクの正しい取り方

何のリスクを取っているのか理解する

ようやくスタート地点に立ったとしてもまだ乗り越えなければならないカベがある。ひとくちにリスクといっても、いろいろな意味があり、これらをうまくコントロールするためには、自分が何のリスクを取っているのか理解しなければならない。

ある街にレストランを開業すると仮定しよう。レストランの経営は立派な事業なので、そこには当然のことながら、リスクが存在する。だがこうした事業に取り組んでいる人の中で、自分はどんなリスクと向きあっているのか、明確に説明できる人は意外と少ない。

レストラン自体は、多くの人に馴染みのある業態で、非常に分かりやすいビジネスといってよいだろう。だが、事業の中身が分かりやすいことと、その事業が簡単であることはまったくの別問題である。レストランという業態は、実は様々なリスクと関係しており、事業主はそれとしっかり向き合う必要があるのだ。

レストランのオーナーが向き合う最大のリスクは、事業リスクである。事業リスクとは、その事業そのものが本質的に持っているリスクのことを指す。
 
出店する場所はどこなのか、洋食なのか和食なのか、味付けはどうなっているのか、メニューの構成はどうなっているのか、などによって、顧客の入りは変わってくる。事業主は、顧客に受け入れられない可能性を常に考慮に入れておかなければならない。

しかし、レストランが直面するリスクはそれだけではない。レストランの経営は、出店する街の人口動態や、資金を銀行から借りている場合には金利にも影響する。

いくら顧客に好まれるメニューを開発したとしても、人が減っていく街に出店してしまったのではどうしようもない。また再開発で人の流れが変わったり、近くに大型飲食店街が建設されるなど、自身ではコントロールできないリスクもある。

また資金を借りる際の金利は、経済動向で勝手に決まってしまう。いくらレストランの事業が好調でも、金利が上がるときは上がってしまうのだ。最近その傾向が顕著だが、人手不足で店員を確保できないというのも、自分自身ではコントロールできないリスクのひとつということになるだろう。

事業を行う場合には、自分でコントロールできるリスクとできないリスクを分け、それぞれに対して対策を講じておくことが必要になる。そして、コントロールできないリスクに直面しても、ある程度までは自力で乗り切れるだけの余裕を持ったプランにしておかないと、イザという時に耐えられなくなってしまう。

想定外だったというのは、税金で仕事ができる公務員なら許されるかもしれないが、自身の財産を担保にしている実業家にはあってはならない言葉である。

加谷珪一

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