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The Style Concierge

テスラ モデルX

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ここ数年アメリカ西海岸を旅した方はテスラの人気の高さをご存知のことと思う。LA周辺はもちろん、サンフランシスコ、それとシリコンバレーに近いサンノゼあたりではフツーに見かける。信号待ちで2台、3台も珍しくない。

そんなテスラの新兵器が日本上陸した。モデルXである。そう、ご覧のようなテスラ初のSUVだ。5ドアサルーンのモデルSのイメージをそのままにうまい具合にSUV化している。というのも、デザインがブランドのアイデンティティになるのはもとより、ハードウエアもかなり共有しているからだ。モデルXはモデルSで使ったプラットフォームを使って仕上げた。

この共有化はまさに電気自動車の得意技。そりゃそうだ。電池を敷き詰めるアンダーボディが基本骨格。多少全長を長くしたり横幅を広めたりすりゃどうにでもなるのである。しかも、このメリットは侮れない。重いバッテリーをクルマの一番下部に搭載するのだから思いのほか重心を低く設定できる。これに対し通常のクルマは、直列式やV型エンジンのヘッド部分や補器類が上の方にあるためここまでは重心を下げられないのが現実。ポルシェやスバルが水平対向エンジンの低重心メリットをしつこく語っているのはそんな事情があるからだ。

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そんなモデルXのスタイリングはやはり目を惹く。それほど奇をてらったデザインではないのに、未来感が強い。きっとフロントマスクがそう感じさせるのだろう。モデルSもそうだが、いわゆるグリルがない。これはエンジン冷却用の空気を取り入れることを必要としない電気自動車だけに許された特権だ。

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そしてスタイリングを語る上で欠かせないのがファルコンウィングドア。フロントは通常の前ヒンジなのに対し、リアは天井ヒンジでガルウィングのようにドアが開く。特徴はヒンジがルーフのかなりセンターに寄っていること。そのため、リアドアの天井の一部から開くので乗り降りが非常に楽となる。しかも天井とサイドウィンドウの間にもうひとつヒンジがあることで、翼をつぼめた状態で稼働することができる。カタログでは幅30cmしかないところでも開けられるそうだから相当使い勝手はいい。

この方式を取り入れた理由はいろいろあるだろうが、三列目シートのアクセスをしやすくしているのは見逃せない。

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床を低く天井を高くしているキャビンと相まって、本当に出入りがスムーズなのだ。ちなみに、シートアレンジは3列シートを欲した場合、前から2/2/2、もしくは2/2/3となるらしい。デフォルトを特に設定しているわけではなく、2列目で終わらせることもできる。

そんなドアの開け閉めは二列目脇のスイッチとタッチスクリーンから。外からはドアに付いているボタンとリモンキーの操作で行う。稼働中はセンサーが働き、人や物が開閉の障害となれば自動停止する。リアドアには左右3つずつドアセンサーが付いているそうだ。そうそう、リアゲートは当然のことフロントドアも電動で開閉できる。

この他の目玉は業界初の医療用HEPAエアフィルトレーションを搭載している点。なんとキャビンを手術室と同じくらいのクリーン状態にするというから驚く。きっと気管支系が弱い方には朗報だろう。アメリカらしく、バイオウェポン対策にもなっているとも語られる……。

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さて、そんなモデルXを早くも走らせてみた。日本上陸から比較的早いタイミングでその機会を得たのはラッキーである。

九島辰也

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