ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

オーダーメイドの“どうする?”

Style_Ichibankan

お洒落道を追求していくと、最後に辿り着くのが、オーダーメイドである。素材もデザインも、お好みのまま。どのようなディテールも自由自在だ。もちろん、どんな体型にだって、ぴったりとフィットする。まさに、ファッションとしては、「最高の最高」といえる世界だ。

*2015年に好評いただいた回のアンコール掲載です

しかし、それだけにハードルも高い。価格はもとより、いざテーラーに行っても、どう振る舞っていいか、何をどうオーダーしていいか、さっぱりわからない方も多いだろう。そこで今回は、銀座でも最高のテーラーのひとつである、老舗・壹番館に赴き、初心者のためのオーダーメイドのやり方と、その魅力を伺ってきた。お洒落道の最後の扉を開けてみよう。

今回の Concierge
渡辺新さん(壹番館洋服店代表取締役社長)

壹番館洋服店は初代・渡邊實によって、銀座の現在と同じ場所にて創業された、85年の歴史を誇る名店である。政財界、文化人をはじめ、数多くの顧客に愛されて来た。今回のコンシェルジュは、その三代目。数多くの“うるさがた”を相手にしてきた経験から、どんな疑問にもベストアンサーを返してくれる。


Q

「まず、どうやって、いいテーラーを見つけたらいいのか、わかりません」


A

「まず、オーダーには、いくつか種類があることを知っておきましょう」

エンリッチ 松尾健太郎 壹番館洋服店

一見端正なスーツだが、丈が長く、パンツは裾が幅広く、バックには深いスリットが入っている。フルオーダーならではの、一着だ。生地は英国のドーメル製を使っている。
一見端正なスーツだが、丈が長く、パンツは裾が幅広く、バックには深いスリットが入っている。フルオーダーならではの、一着だ。生地は英国のドーメル製を使っている。
創業者、渡邊實と戦後まもなくの壹番館洋服店。木造の2階建てだったという。
創業者、渡邊實と戦後まもなくの壹番館洋服店。木造の2階建てだったという。

——今日は、オーダーについてのお話を伺いたいと思います。壹番館さんといえば、銀座の超一流処という感じがするのですが、やはりさまざまな有名人の方が通っていらっしゃるのですよね。
 
「はい、お陰さまで、政財界や文化人の方をはじめ、大勢の方に訪れて頂いております。中には親子三代に亘って通って下さる方もいらっしゃいます。それが私どもの一番の財産ですね。具体的にお名前を挙げることは控えさせて頂きたいと思いますが・・」

——さて、そんな一流テーラーで、一着作ってみたいと思ったら、どうすればいいんでしょう? 自分に合っているテーラーの見つけ方を教えてください。

「その前に、オーダーといっても、いくつか種類があることに注意して頂きたいと思います。それはイージーオーダー、パターンオーター、そしてフルオーダーです。イージーやパターンというのは、端的に言うと、工業製品のようなもので、ラインがあり、作業はそれぞれのパートに分かれています。クルマでいうと量産車ですね。それに対して、フルオーダーは、すべての工程を一人の職人が行ないます。いわゆる“丸縫い”というヤツですね。クルマでいうとレーシングカーのようなものでしょう。そしてわれわれがやっているのはフルオーダーのみなのです。銀座でもフルを専門にやっているところは、ほとんどなくなりました。イージーやパターンと、フルとは、まったく違うものなのです」

——その差は、やはりお値段にも表れますか?

「イージーオーダーやパターンオーダーなら、10万円台からあると思いますが、フルオーダーとなると、30万円は超えてくると思います。現在では、フルとパターンを併用しているところも多いですね」

——さて、仮にフルオーダーにチャレンジしてみるとして、肝心の店選びですが、どういったことに注意すればいいでしょうか?

「店との相性といったことはもちろんありますが、その前に、“その店が、ちゃんと続いていくのか”ということが大事です。オーダー品は、少なくとも30〜40年は持ちます。『父親が着ていた、50年前のスーツを直して着たい』というリクエストも実際にあるのです。そんなとき、店自体がなくなっていたら、どうしようもありません」

松尾健太郎

Return Top