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「アートフェア東京」北島輝一
貨幣の価値を担保するのがアート

お金の価値を担保するのがアート

E:北島さんはコレクターとしてどんな作品がお好きですか?

北島:最初はアートって具体的でカラフルな作品というイメージがあったけど、気づくと自分がコレクションするのはモノクロの抽象画ばかりになっていました。ちなみに、マネックス証券の松本大さんもトレーダーでしたが、コレクションは私と同じモノクロの抽象画が多いみたいです。

先日まで金沢21世紀美術館でやっていた井上有一(※4)展に私のコレクションを貸していました。500万円で買った作品だけど、海外での価格は1200万円ほどになっています。小清水漸(※5)の作品も12年の秋に70万円で買ったものが、半年後のアートバーゼルで4万ドルでした。

(※4)今年が生誕100年となる書家。海外での評価も高く、3月21日まで金沢21世紀美術館で大規模な展示会が開催されていた。

(※5)木、石、紙などを使った彫刻やインスタレーションを手がける作家。名前の読みは「こしみず すすむ」。

E:国内と海外でそこまで大きな価格差があるんですね。

北島:国内ローカルでの価格と、グローバルなプレイヤーになったときの価格に飛躍があるということですね。株価がIPOしたときに高値がつくのと似てますよね。

ただ、はじめて500万円もする書を買ったときは2日くらい寝られなくて(笑)。今となっては値段も上がりましたし、美術館に貸し出すのはなんといってもコレクター冥利に尽きると思っています。

オフィスの会議室には2012年に購入した名和晃平の作品が飾られていた。
オフィスの会議室には2012年に購入した名和晃平の作品が飾られていた。

E:北島さんはアートとお金はどのような関係にあると考えていますか?

北島:お金とは経済規模を表す指標なんです。たとえばアメリカの経済規模はこれだけあって、その中である企業の時価総額はいくら、経営の価値はいくら、社長の年収はいくらという形で表される。よく日本人は年収が20億と聞くと時給に換算したがるけど、それはまったく逆なんです。

時給を積み上げて年収になるんじゃなくて、総額でこれだけの価値を生み出しているから、結果として時間でいくら稼いでいるという表現になるわけです。お金は物差しでしかなく、結果でしかない。

アートは人間が積み上げてきた「知性」だと思っています。人類誕生以来積み上がってきた「知性」を抽象化したのがアートなんじゃないかなと。積み上がったものが今の世界の経済価値だから、お金の方がアートよりも後にある。つまり、お金の裏付けはアートなんじゃないかなと思っています。

E:金本位制ならぬ、アート本位制とでもいうべきでしょうか。

そうそうそう。いってみればそうですね。アートはお金よりも先にあるもので、お金はアートの価値を表す指標だということです。

ーーー次回はアートフェア東京のエクゼクティブ・プロデューサーをつとめる來住尚彦氏のインタビューを掲載予定。日本を含むアジアのアートマーケットが目指す先について、富裕層に向けたアート・ツーリズムなど、音楽業界から転身を遂げた氏が手がける数々のプロジェクトに迫ります。お楽しみに。


北島輝一
1974年生。1999年慶応義塾大学院理工学研究科卒、野村證券入社。以後11年間、債券トレーダーとして東京・ロンドンで日系・外資系証券で勤務。2011年より現職。


「アートフェア東京2016」開催概要

ファーストチョイス(特別内覧会)&オープニングプレビュー
5月11日(水)ファーストチョイス16:00 〜 18:00、オープニングプレビュー 18:00 〜 21:00

一 般 会 期
5月12日(木)14:00 〜 21:00 VIP先行入場 11:00
5月13日(金)12:00 〜 21:00 VIP先行入場 11:00
5月14日(土)10:30 〜 17:00
開場時間は全て予定です。

会 場 : 東京国際フォーラム ホールE(旧:展示ホール)及びロビーギャラリー(東京都千代田区丸の内3-5-1)

入 場 料 : 1-DAYパスポート 2,500円(税込) 3-DAYパスポート 4,500円(税込)
前 売 り: 1-DAYパスポート 2,000円(税込) 3-DAYパスポート 4,000円(税込)


TEXT:舩山貴之

エンリッチ編集部

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