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東芝問題からお金持ちは何を学ぶべきか?

東芝が米原子力事業の損失によって債務超過に転落した。巨額損失の直接的な原因となったのは米国の原発建設プロジェクトの赤字だが、その背後には別な要因がある。

東芝の失態は巨額だったことから大きな話題となってしまったが、実は、多くの企業や人が、同じような失敗を日常的に繰り返している。その意味で東芝問題はわたしたちに重要な示唆を与えてくれている。

東芝は2017年2月14日、2016年4〜12月期の最終損益が4999億円の赤字になったと発表した。損失のほとんどは米原子力事業の減損で、損失額は7125億円に達する。12月末時点の株主資本は1912億円のマイナスで、同社は債務超過に転落した。直接的な原因は米国における不採算プロジェクトにあるのだが、そもそもこうした不採算プロジェクトを抱え込む結果となったのは、米国の原子力企業を無理に買収したからである。

東芝は2006年、米国の原子力企業ウェスチングハウス(WH)を54億ドル(当時のレートで約6400億円)というかなりの高額で買収した。当時、WHの買収には三菱重工も名乗りを上げていたが、東芝が提示した価格があまりにも高く、買収を断念したという経緯がある。買収価格がいかに高かったのかが分かる。

技術的な面でも同様だった。東芝はもともと米GE(ゼネラル・エレクトリック)との技術提携で原子力分野に進出しており、東芝が製造する原子炉の形式はGEと同じBWR(沸騰水型)であった。しかしWHが主に製造していたのはPWR(加圧水型)で、WHとは炉の形式が異なる。WHは三菱重工に技術供与を行っており、三菱の炉の形式はPWRだ。したがって、WHの買収によってシナジー効果を得やすいのは東芝ではなく本当は三菱の方であった。

2006年時点において東芝はウェスチングハウスの事業についてかなり強気の見通しを立てていた。10年で売上高を約2倍に拡大し、投下資本は17年かけて回収するというプランだったが、それは原子力ビジネスが今後も順調に拡大するというシナリオが大前提である。しかし、原子力ビジネスの市場環境は東芝の想定とは逆方向に進んでしまい、原発のプロジェクトは伸び悩んだ。

この時点で、東芝経営陣が正しい決断をしていれば、今のような状況には陥らなかっただろう。本来であれば、想定通りの業績が得られていないということで、相応の減損を計上し、高すぎた買収金額を精算する必要があった。だが東芝の経営陣はそのような決断はしなかった。というよりも、責任問題になることを恐れ、ズルズルと決断を先延ばししていったというのが実態だろう。

だが、いくら決断を先送りしても米国原子力事業の状況が改善されるわけではない。追い込まれた東芝は、自身がすべてのリスクを負う契約を受け入れ、無理な原発受注を繰り返す結果となった。

加谷珪一

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