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投資家はトランプ時代にどう備えればよいか

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米大統領選挙でトランプ氏が勝利したことを受けて、為替市場では一気に円安が進んでいる。米国株は大幅高だが、この流れは今後も続くのだろうか。またトランプ時代における投資戦略はどう組み立てればよいのだろうか。

トランプ氏の勝利で米国の株高とドル高(円安)が同時に起こったのは、トランプ氏が公約として掲げる大規模インフラ投資を先取りした動きと考えてよい。同氏は選挙期間中総額で5000億ドルを超える規模のインフラ投資を主張しているが、もしこれが実行されれば、各年のGDP(国内総生産)を0.7%ほど押し上げる効果がある。こうした直接的な影響に加えて、労働者の所得向上による消費の拡大やインフラ整備による波及効果なども合わせると、当分の間、米国の景気は拡大する可能性が高い。

トランプ氏は一方で減税も主張している。そうなってくると、巨額のインフラ投資の財源としては国債の増発に頼らざるを得ない。景気拡大と国債増発が重なるので金利はさらに上昇する可能性が高い。選挙の終了直後から続く株高とドル高、金利高はこうした動きを先取りしたものである。

トランプ氏の公約が確実に実行されるのであれば、これらの動きは教科書的であり、投資家はその流れに乗った方がよいだろう。だが問題となるのはその実現可能性である。今回の選挙では議会も共和党が多数派となったので、オバマ政権に比べればトランプ政権が政策を実行できる可能性は高くなった。だが議会には財政均衡論者も多く、投資や減税の額が縮小されることもあり得る。その場合には、市場の水準は行き過ぎとなり、大幅な調整を余儀なくされるだろう。
 
もうひとつの懸念材料は貿易交渉である。トランプ氏は大統領就任初日に、TPP(環太平洋パートナーシップ)協定を破棄する方針を明確にしており、通商問題は各国の個別交渉に委ねられることになった。また、最大の懸念事項であるNAFTA(北米自由貿易協定)についてはどのような扱いになるのか見通しは立っていない。NAFTAまで大きな見直しということになると、米国の株式市場にはマイナスとなる。

ただ、大きな流れとしては、米国は経済的に有利な状況にあることは間違いない。シェールガスの開発によってすべてのエネルギーを自給できる状況にあり、先進国では珍しく人口増加が続く。米国が多少、保護貿易的になったところで、米国の巨大な内需が低迷する可能性は低く、景気全体への影響は軽微だろう。

加谷珪一

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