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ビル・ゲイツ マイクロソフト創業者

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iStock:rvolkan

ビル・ゲイツ氏は説明するまでもなくマイクロソフトの創業者である。現在は経営から退き、莫大な富をもとに慈善活動家として世界を飛び回っている。ゲイツは時間に対する考え方が非常に明晰であり、これがビジネスの随所に生かされている。富を作る有力な手段として時間の有効活用を上げる人は多いが、ゲイツ氏から学ぶところは大きいだろう。

*この記事は2016年12月に掲載されたものです。

考える週を設けた本当の理由
 
ゲイツが現役時代、「Think Week(考える週)」というものを実践していたことはよく知られている。年に2回ほど、1週間、日常の業務から離れて誰とも合わず、深い思考を行う時間を確保するというものである。この間、ゲイツ氏は学術論文など、普段ゆっくり目を通すことができない情報に接し、長期的な戦略を練ってきた。

考える週というのは、非常にわかりやすい話なので、時間のメリハリを付けるという意味で多くの人が参考にしているはずである。だが、ゲイツの時間に対する意識は、日常的な業務の中でも徹底している。コミュニケーションは少人数であればあるほど効率が良くなる。究極的なコミュニケーションの効率化は、一切、他人と関わらず自分一人で決めることだが、それでは判断は独善的になる。

ゲイツは、常々、チームで判断することのメリットと、コミュニケーションのムダについて考え抜いてきた。最終的に得られた答えは、出来る限り優秀な人材を集め、少数での意思決定を心がけるが、チームとしてうまく機能するようツールを最大限活用するというやり方だった。

雑事に惑わされず、本来の仕事に集中できる環境を整えることで、コミュニケーションのムダを最適化することができる。さらに組織のデザインに細心の注意を払い、チームとしてどこまでの権限で仕事をするのかという境界領域の設定にかなりの労力を割くという。

ゲイツが最良の教科書としたのは、意外にも重厚長大産業の象徴でもある自動車メーカーであった。GMを世界最大の自動車メーカーに育て上げた名経営者、アルフレッド・スローンの著書を徹底的に読みこなし、最適な組織のあり方について考え抜いた。

ゲイツ氏が現役だった時代、すでにマイクロソフトは巨大企業となっていたが、開発チームの決定事項をチェックする仕事は、担当の幹部とゲイツ氏の2人だけで行っていたという。いつどのようなタイミングでチェックを行うのかについても事前に公表することで、社内時間の確保が最大化されるよう留意したという。

加谷珪一

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