高収入を得ている女性の労働時間はさらに短い
労働時間と年収で興味深いのは、年収による違いに加えて、男女の差が大きいことである。男性と女性では、同じ年収の人を比較すると、女性の方が2割程度、労働時間が短い。
日本でも、家事や子育てを夫婦で対等に行う家庭も増えているが、主に女性が家事を負担するというケースはまだまだ多いだろう。そうなってくると、女性の場合、子育てや家事などの都合で、仕事を早めに切り上げている可能性が高く、その分が、労働時間の減少として統計に反映されることになる。
女性の労働時間の減少は、年収が上がるとより顕著になってくる。年収1500万円以上では、労働時間は7時間まで減少する。先ほど、男性も年収が高い方が労働時間が少ないと書いたが、ここまで著しい減少は男性には見られないものである。数字だけを見れば、大金を稼ぐ女性の生産性は極めて高いということになる。
高い年収の女性の労働時間が著しく短いことについては、いろいろな見方ができるだろう。だがひとつ言えることは、家庭の事情があるとはいえ、女性がここまで労働時間の短縮が実現できているということは、男性も含めて、やる気があれば、もっと労働時間が短縮できる可能性があるということである。
責任の所在をはっきりさせることが生産性向上の第一歩
確かに労働時間を短くすることで、連絡事項がうまくいかなかったり、決済までに時間がかかるといった弊害は発生しているかもしれない。女性管理職の労働時間が著しく短い分、だれかがそれをカバーしている可能性は否定できない。
だがそれ以上に、仕事を効率化する工夫が出来ている意味は大きいと考えるべきだろう。管理職が職場に長時間いなくてもいいようにするためには、部下に対して仕事や責任の範囲をあらかじめ明確にしておく必要がある。労働時間が短い女性管理職の場合には、それが出来ている可能性が高いのだ。
以前、日本でもワークシェアリングが議論されたことがあったが、現実に導入は難しいといわれている。その主な理由は、仕事における責任の曖昧さである。日本では、誰がどの仕事をどこまで担当するのか曖昧になっていることが多く、複数の人に仕事を引き継ぐことが難しくなっている。このため、同じ人が長時間、仕事を続けるという結果になりがちである。
ワークシェアリングを導入している欧州でも、いろいろと問題はあるようだが、仕事上の役割や責任を明確化するという試みは、もっと積極的に行われてもよいだろう。これができれば、日本企業の生産性はもっと向上するはずだ。