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フェラーリ ローマ 試乗レポート

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フェラーリにこれまでとはちょっと変わった新種のモデルが登場した。フェラーリローマである。この春のジャパンプレミア時にも本コラムで取り上げたが、今回ステアリングを握る機会を得たのでレポートする。

都市の名前をつけたモデルは彼らの歴史を紐解いてもかなりレアだ。これまで“マラネッロ”や“モデナ”といったフェラーリお膝元の街や都市名、もしくは“イタリア”なんて大雑把に国名がついているものはあるが、それ以外はほぼない。直近ではポルトフィーノくらいだろう。ちなみに、販売戦略として北米で売りたいモデルには、“カリフォルニア”や“アメリカ”なんて言葉を使ったりする。その多くが屋根が開くのが特徴だ。

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つまり、新型ローマはそれだけ変わり者ということなのだが、それは同時に新世代であることを意味する。そう、文字通りの新種。そしてそれはローマのデザインが言い表している。

このクルマのコンセプトは“La Nuova dolce vita”、日本語に訳すと“新しい甘い生活”となる。この考え方は1960年に公開されたフェデリコ・フェリーニ監督作品の“甘い生活”をベースにする。良き時代のイタリアの上流社会を描いた作品だ。で、それを今的に解釈したのが“La Nuova dolce vita”となるそうだ。フェラーリはそれをデザインで表現した。

ローマのデザインがどこかノスタルジックで、かつ前衛的でもあるのはそんな理由だからだろう。なだからな曲線を使って妖艶な雰囲気を醸し出している。それはまるで50年代や60年代のモデルにあったカッコよさを再現しているようだ。250GTや275GT、330GTシリーズあたりだろうか。確かに、かつてフェラーリデザインをピニンファリーナが手掛けていた頃は、丸みをおび、妖艶な雰囲気のモデルは多かったかもしれない。

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これはこのところエアロダイナミクス至上主義的とも思われる他のフェラーリモデルとはある意味真逆にある。空力に関する解析技術が上がったことで直線的なボディラインが主軸となっているが、それとは別のベクトルに向いている。

フェラーリレッドについても考え方を変えるようだ。80年代のF1でそのイメージが世界中に広まったフェラーリレッドだが、すでにそのマーケットは高齢化してしまったし、いつまでもそれに囚われていては前に進めないと判断したらしい。もちろん、サーキットではこれまで通り真紅の旗がなびくだろうが、GTカーは変わる方向。確かに今回試乗したローマの赤はこれまでとは違う渋めのワインレッドだった。

九島辰也

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