ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

2015年の投資戦略 vol.2

資産デザイン研究所代表の内藤忍氏が、各界のプロフェッショナルと投資談議に花を咲かせる、この企画。

今回は特別編として「2015年の投資戦略」について、内藤氏に語ってもらうことにした。2015年は実物資産への資金の流れが強まると予想を立てているが、そのひとつが不動産だという。

エンリッチ 内藤忍 不動産投資

都心と郊外の不動産格差が鮮明に

各国中央銀行の政策リスクなどの影響を受け、実物資産への資産流入が起きている。前回そう申し上げました。その中でも、とりわけ国内外の不動産への注目度は高まると見ています。そこで今回は、国内の投資環境と失敗しないための戦略についてお話していきましょう。

本連載で以前、都心の中古ワンルームマンション販売・管理の大手企業である日本財託の重吉社長との対談を行いました。その中でも触れましたが、私は日本の不動産の本命は東京23区だと思っています。

日本は全体としては2006年から既に人口減少に転じています。経済成長率も、低迷していることから、投資対象として日本を敬遠する声もあるようです。確かに、地方はシャッター商店街ばかり、東京でも郊外に行けば40㎡の中古マンションが500万円を切るというケースもあるようです。

しかし一方で、銀座や六本木、東京五輪があることから晴海をはじめとするウォーターフロント、新駅が予定される東京・品川‐田町間など、人気が絶えず地価・家賃ともに上昇傾向のエリアがあることも事実です。

外国人も東京都心部の不動産には注目していて、都心の高層タワーマンションを中国人富裕層が買いまくっているというニュースを耳にしたことはあるはずです。

つまり、国内においては東京と地方の格差がより顕著になっている。そして同じ東京でも、エリア選定をセレクティブに行わないと、投資は失敗してしまうということです。

狙い目となるのが、首都圏の東京の中でも、東京23区内という理由は、高い物件需要により、リスクを相対的に低く抑えられると考えられるからです。

とはいえ、初心者がいきなり不動産会社の物件を見て回ったところで、掘り出し物を発掘するのは容易でありません。そういったお宝物件は、百戦錬磨の投資家がすでに買っているケースが多く、残りモノをつかまされる可能性もありますし、テナントが入り続けて収益を生み出す物件を見極めるのは、やはり難しいでしょう。例えば、東銀座から徒歩8分の物件と、浅草から徒歩5分の物件があったとして、どちらが有利かなんて、初心者には簡単に判断は下せません。

それに、物件を購入した後の管理も、誰に任せればいいのでしょうか。いくらスペック上は良物件だとしても、賃料が入ってこないことに意味がありません。空室で持っていても固定資産税がかかるだけです。

そこで、私はこういった不動産投資におけるリスクを軽減してくれるパートナーにお任せするのが賢明だと考えています。良質な物件を紹介してくれ、かつ適切に客づけ・管理もしくれるなら、投資家からすれば申し分ありません。

自分が不得手な部分は知識を持った信頼できる専門家に任せる。その方が成功の確率を高められるといえるのです。自分で目利きをするのではなく、目利きをしてくれる人を目利きするのです。そもそも、不動産投資の本質は収益物件を持つことであり、物件探しマニアになることではありません。

不動産における分散投資とは?

潤沢な資金が用意できる人は、いきなり1億円のマンションやアパートを1棟まるごと購入することもあるようですが、それでは1カ所に物件のリスクが集中します。もし、隣に日照を遮るような物件が建ってしまったり、マナーの悪い入居者が入ると、それだけで物件自体が敬遠される可能性も…。

そう考えると、同じ1億円を投じるなら、1戸1000万円の物件を異なるエリアに10戸買ってロケーションを分散させたほうが、リスクはより抑えられます。23区内のワンルームマンションは、そんな分散投資に最適といえるでしょう。

また、大切なのは新築よりは中古を選ぶこと。新築物件は買った瞬間に価値が買値より下がりますし、何よりテナントが見つかるまで、収益を生み出しません。それよりは、購入時点で価格下落が抑えられ、かつ購入と同時に家賃収入が発生する入居者の入っている物件を選ぶことです。いわゆる、オーナーチェンジの物件を狙うのです。

国内不動産には、ローンがつけやすいというメリットもあります。海外でもアメリカだと物件価格が2000万円だとしたら1000万円など、半分までしか融資を受けられないのが一般的ですが、日本は条件にもよりますが、自己資金60万円程度で、2000万円の物件が手に入ります。

借入金利も、アメリカでは約5%、新興国だと10%近くかかるケースがありますが、日本は2%程度の低金利です。そして、借入金で物件を買っても、低金利なら利ザヤも期待できます。仮に利回りが4%であっても、借入金利が2%なら、残り2%分はプラスになり、キャッシュフローを生み出せるわけです。

ところが海外の場合、利回り10%であっても借入金利が9%なら、ほぼ収益は生まれません。よって、金融機関の融資を受けて不動産投資をするなら、国内のほうに妙味があるといえるでしょう。

もちろん、実績のある会社に管理を任せたとしても、空室や金利上昇、家賃の下落といったリスクは完全に解消はできませんが、不動産価値が落ちづらく、テナントが入る物件をしっかりとケアしてもらえば、成功の可能性は高まります。例えば、港区の2000万円のマンションが、10年後に1000万円になる可能性は低いはず。もし、年間5%の家賃が入ってくれば、10年で半値になっても、損はしない計算になります。

株であれば1日で半値、為替(FX)のようなレバレッジ取引であれば、1月に発生したスイスフランショックのように急激に値が飛ぶこともあります。しかし、不動産のような実物資産はモノ自体に価値があり、それを必要とする人がいる限り、価値がゼロにはなりません。

相場全体の煽りを受けて下がることはあっても、金融商品よりはリスクは抑えられています。日本の不動産は、為替リスクを取りたくないけど、資産を形成したい人に向いているというわけです。相続税対策として活用できるのもポイントです。

ーーー安定的に運用できる投資先として、国内不動産を挙げた内藤氏。その理由は、ここで述べたとおりだ。ポイントは、東京23区内、中古マンション、ロケーションの分散、管理。これらを守るだけで、極めてリスクは抑えられるという。理解した上で、取り組みたい。

次回のテーマは、海外不動産。どういったエリアに光明があり、どういった戦略が求められるのだろうか。詳細は、更新をお待ちいただきたい。


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内藤 忍(ないとう しのぶ)

株式会社資産デザイン研究所代表取締役社長
一般社団法人海外資産運用教育協会代表理事
東京大学経済学部、MITスローン・スクール・オブ・マネジメント卒業(MBA)。

大学卒業後、住友信託銀行に入社。
1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。
その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。
2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。

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早稲田大学オープンカレッジ、丸の内朝大学などで講師を務め、雑誌、ネットでの連載コラムを担当。主な著書にシリーズ10万部を超えるベストセラーとなった「内藤忍の資産設計塾」シリーズ。「60歳までに1億円つくる術」「「好き」を極める仕事術」「丸の内朝大学マネーの教科書」「究極の海外不動産投資」など多数。最新刊は1月末に出版した「飲めて殖やせる 究極のワイン投資」。

内藤忍

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