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金融資産だけでは資産は守れない

週刊|内藤忍のマネーCafe

外貨資産を保有する重要性については、今までのお話でご理解いただけたと思います。資産運用と言うと、通常は株式や投資信託と言った金融商品になりますが、最近注目されているのが不動産やワイン投資といった「実物資産」への投資です。

特に、金融資産が1000万円を超えてくると、分散投資によって株式や債券に投資をしていくだけでは、不十分と言えるのです。

実物資産への投資を行うべき理由は、金融資産とは異なる特徴があるからです。2つの資産のメリットを上手に活用すれば、資産運用の成果をさらに高めることができるのです。

実物資産から得られる投資のメリットは大きく3つあります。

1つは資産価格の上昇による「キャピタルゲイン」、2つ目は保有している資産からの安定した「インカムゲイン」、そして3つ目は減価償却による「タックスメリット」です。

特に3番目のタックスメリットは不動産投資に特有のものになります。購入した不動産の建物部分を法律で定められた年数によって費用として計上できる税制上の取り扱いですが、特に築年数が22年を超えた中古木造建築物の場合、4年間で償却することが、日本の税法上認められています。減価償却費用は、給与所得による課税対象額と相殺できますので、所得の大きな人にとっては節税メリットとなるのです。

金融資産と実物資産の違いをまとめたのが、表1になりますが、それぞれに大きな違いがあることがわかります。

表1 実物資産と金融資産の違い

例えば、実物資産は、金融資産に比べ、市場の効率性が低い資産です。これは、デメリットのようにも見えますが、収益機会ととらえることもできるのです。

株式市場や為替市場などの金融資産は、リアルタイムにマーケットで価格が形成されていきます。また参加者がグローバルに広がっており、価格に歪みが発生しにくい投資対象ということができます。

一方、不動産のような実物資産は、相対取引が原則で、情報の伝達が不完全ですから、価格に歪みが生じやすくなっています。マーケットの歪みが是正されにくく、割安な投資対象を見つけやすいという特徴があります。

デメリットとしては、流動性が低い分、取引に時間がかかり、手数料などの取引コストも高くなる傾向があります。

したがって、実物資産への投資は、金融資産よりもさらに長期的な資金を使って行うことが必要です。

保有している資産をすべてリアルアセットに投資してしまうのは、危険ですが、資金の一部を不動産などの実物資産に配分することは検討する価値があるのです。

金融資産の運用の基本は、分散投資によってリスクをコントロールして、バランスを考えていくことですが、実物資産は、投資金額も大きく、分散投資をするのが簡単ではありません。単体での投資のシミュレーションをした上で、資産全体に対して一定の範囲内の金額で投資していくのが現実的です。

先進国であれば、例えば、アメリカの安定した賃貸マーケットのあるエリアに存在する中古アパート物件を購入すれば、値上がり益だけではなく、テナントからの安定した家賃収入が得られます。

フロリダのコンドミディアム

一方の新興国の不動産投資は、現地の物件価格の上昇や現地通貨の上昇によってキャピタルゲインを主目的にする投資と言えます。

例えば、シンガポールに隣接したマレーシアのジョホール・バルと呼ばれる地域があります。これからの開発によって大きな価格の上昇が期待されています。開発が想定どおりに進むのかというリスクがありますが、予定どおりの開発プランが進めば、大きなキャピタルゲインが期待できます。

クアラルンプールの物件
ブノンペンの物件

私が購入したフロリダの物件は、購入金額が9万米ドル(当時の為替レート:1米ドル= 83円で約750万円)でした。家賃は月950米ドルで、年換算すると額面で1万米ドル以上になります。

その後、為替が円安に振れたこともあり、家賃収入は年間100万円を超えるようになりました。また、現地の物件価格も30%以上上昇し、12万米ドルになっています。現状の為替レート(1米ドル=100円)で換算すれば、1200万円程度になります。

このように実物資産への投資には、リスクと引き換えに大きなリターンの可能性があるのです。次回は、実物不動産に関して、現地で物件を取り扱っているスペシャリストの方をゲストにお招きして、より具体的な投資手法についてご紹介いたします。


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内藤 忍(ないとう しのぶ)

株式会社資産デザイン研究所代表取締役社長
一般社団法人海外資産運用教育協会代表理事
東京大学経済学部、MITスローン・スクール・オブ・マネジメント卒業(MBA)。

大学卒業後、住友信託銀行に入社。
1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。
その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。
2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。

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早稲田大学オープンカレッジ、丸の内朝大学などで講師を務め、雑誌、ネットでの連載コラムを担当。主な著書にシリーズ10万部を超えるベストセラーとなった「内藤忍の資産設計塾」シリーズ。「60歳までに1億円つくる術」「「好き」を極める仕事術」「丸の内朝大学マネーの教科書」など多数。最新刊は「究極の海外不動産投資」(幻冬舎)

内藤忍

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