ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

アートローヤー 小松隼也 
世界基準のアートコレクターとは

年100万の投資から始める
アートコレクターへの道

E:よいコレクターになるためには、どのくらいの投資額が必要でしょうか。

小松:コレクションを楽しむということであれば、年100万円もあれば十分だと思います。仮に年1000万円使えれば、10年後、20年後には、とてつもないコレクションが完成するでしょう。もちろんそこは、しっかりしたコレクションのコンセプトや審美眼が必要ですが、最初はギャラリストや作家から作品に関する話を聞いてみて、気になった作家や自分の好みの作品など、直観で購入して良いと思います。そのうちに、自分の好きな傾向やコンセプトなどが見えてきて、コレクションを通じて知り合った人たちと意見交換などをする中でどんどん方向性が固まっていきます。その頃には作品をコレクションするのが楽しくて仕方ないようになっています。コツは長くやることかなと思います。短期でコレクションを完成させたいとか、リターンを得たいとか考えるとうまくいきません。

また、よく「決まった作品の価格はないのか?」とか、「後で価格が落ちることもあるから、作品を購入するのは不安」という話を聞ききますが、世界で知られるようになってきた作品は相場がしっかりしていますし、一定の価値を超えた作品は、一時的に価格が落ちることがあっても、長期的に見れば価格は上がる一方です。たとえば、海外のアートフェアなどで1000万円から3000万円クラスの価格の作品になると、長期的に見て価格が落ちることは、ほぼないんじゃないでしょうか。

いきなりそこまでの額が出せなくても、その金額の作品を作っている作家も若いときには一点、数万円~数十万円で作品を購入できたことは間違いありません。30万円も出せば、将来が有望な若手作家の作品を買うことができます。ですから、年間30万円~100万円の作品を買える人なら、そういった若手作家を見出すことが可能ですし、作品を所有することで作家やギャラリストと親しくなり、観るだけだったアートとの付き合い方がガラリと変わっていきます。ギャラリーからパーティに声を掛けられたり、同じ作家を所有している人と話が盛り上がって、他業種への人脈が広がったりといったこともあります。海外では、富裕層はワインとアートが共通言語なんていわれますが、アートを所有することで広がる交流もコレクションの醍醐味のひとつだといえます。

エンリッチ 小松隼也6

エンリッチの読者の皆さんには、ぜひ、アートを買うことの楽しみを知っていただきたいですね。

*この記事は2016年10月に掲載されたものです

ーーーアートロイヤー小松隼也氏によるコラムが近日開始。NYのアート事情やアートと法の関係など、多彩な内容をお届けします。皆さま、こうご期待。


TEXT:舩山貴之
撮影:杉山順平

エンリッチ編集部

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