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英国のブレグジットはブロック経済をもたらすのか?

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英国のメイ首相は1月17日、演説を行いEUからの離脱交渉について「EU域内での単一市場にとどまることはできない」と述べ、単一市場からの撤退を明言した。英国内ではこれまで、EUからの離脱交渉について、移民規制を優先し、単一市場へのアクセスは犠牲にしてもよいとする「ハード・ブレグジット」と、単一市場へのアクセス維持を最優先にする「ソフト・ブレグジット」が対立していた。メイ氏はソフトブレグジットはあり得ないということをはっきりと示したわけである。

この結果は、事前にある程度予想されていたので、大きな驚きがあったわけではない。EU側にしてみれば、安易に英国に妥協してしまうと、他のEU加盟国の中から離脱ドミノが発生する可能性が出てくる。タテマエの部分が大きいといはいえ、英国に対して簡単に妥協することはできないはずだ。また英国としてもEUとの中途半端な関係が残ってしまうと、その他の国々との自由貿易協定の締結に支障を来す可能性がある。EUとの立場をはっきりさせておくことは英国にとってもそれほどマイナスな話ではない。

英国はこれから時間をかけてEUとの新しい自由貿易協定について交渉を進めることになる。英国はEU各国に年間20兆円ほど輸出しているが、英国はEU各国から30兆円も輸入しており、輸入額が輸出額を大幅に上回っている。EUにとって英国は「お客様」なので、EUと英国が断絶してしまうほどの結果にはならないだろう。したがってハード・ブレグジットになったからといって過度に不安視する必要はない。

ただ、今回の結果は、中長期的に見た場合、世界経済をよりブロック化させる効果をもたらす可能性が高い。これは多かれ少なかれ、日本経済や日本企業の経営に影響を及ぼすことになるので、多少の注意が必要となる。

ブロック経済とは、1929年に発生した世界恐慌をきっかけに出来上がったシステムである。各国は恐慌に対処するため、英国やフランスなどが自国の植民地との間で排他的な関税同盟を結び、他の経済圏を締め出すような体制を構築した。

トランプ大統領は、米国の輸入品に対して関税をかける、あるいは輸出企業の税負担を軽くするような制度の構築を示唆している。これが行き過ぎると、一種のブロック経済として機能する可能性が否定できないのだ。

加谷珪一

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