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資産1億円がなぜ重要か?

ストックはフローを生み出すための原資である

富裕層の人が、相続する相手もいないのに、相当な資産を残したまま亡くなるケースは多い。周囲はなぜ大金を残したまま死ぬのか不思議がっているが、これも同じようなメカニズムで説明できる。

富裕層の人がお金を残したがるのは、彼等がストックとフローの区別を明確にしているからである。あまり資産を持たない人は、ストックとフローの区別があまり明確になっていない。貯金はしていても、ちょっとした高額の買い物をするときは貯金を崩して出費している(稼ぎが少ないのでやむを得ないのだが)。

だが一定以上の資産を持っていると発想が異なってくる。大きな資産があるとそれを運用することで、それなりのフローを稼ぎ出すことができる。つまり給料をもらわなくても、資産が生み出す運用益で生活できるのだ。

そうなってくると、フローを生み出すための原資である金融資産は、あくまでフローを生み出すためのものであり、使い込む対象とはならない。

金融資産が5億円あれば、仮に3%の利回りだとしても年間1500万円の収入がある。5億円を取り崩すことなく、年収1500万円を実現できるのである。この人は5億円の資産を持っているので、その気になれば、数千万円のフェラーリをキャッシュで買うことができるだろう。だが、仮に5000万円の買い物をしてしまうと、保有するストックは1割減ってしまう。結果として、来年の年収も1割減ってしまうことになる。

何としても高額商品にバンバン支出したいという人を除いては、ストックに手を付けてまで、消費を拡大しようとは思わない。結果的に元手の5億円はそのまま残っているという状態になる。

あまり資産を持っていないと、まとまった支出はフローだけでカバーできないので、選択の余地なく、ストックにも手を付けることになる。だが資産がある人にとっては、自分の資産に手を付けるということは、自身の体を切り売りするようなものであり、その消費には躊躇することになる。

先ほどの5000万円を使いたくないというケースはまさにこれに該当する。彼が資産家の仲間入りを果たしたというのはそういう意味である。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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