
リクルートで就転職サイトや学習情報誌の編集長を歴任し、「上司力®」提唱者としてマネジメントやリーダーシップの指南書も数多く出版する前川孝雄氏が、経営者の多いエンリッチ読者に贈る連載です。−−−
働きながらの学び、そして今の学びこそが重要
大手企業や官公庁が、新卒一括採用を重視してきた日本。個人にとってはその関門を通過できるかどうかが、その後の人生設計に強く影響してきた日本では、学歴にこだわる人が少なくありません。しかし、その学歴が示すのはあくまでその人の17歳、18歳時点での偏差値に過ぎません。人生100年時代。50~60年ものキャリアを築くなかで、転職することも一般化しており、10代終盤の学歴の意味はどんどん小さくなっていきます。
社会人になって再進学する人はまだ少ないとはいえ、徐々に誰もが働き続け、学び続ける時代になっています。70歳を超えても現役のリーダーや経営者として働き続ける人も増え続けています。しかも、時代も社会も大きく変化していますから、知識はすぐに陳腐化します。大学時代に何を学んだかということ以上に、働きながら何を学んできたか、今何を学んでいるかということのほうがずっと重要になっているのです。
日本では、まだまだ社会人が働きながら大学院などで学ぶことは一般的とは言えません。しかし、これからの社会では、もっと社会人学生が増えていくでしょう。
「生きた学び」体験から「学び続けるサイクル」に入る
私は、1990~2000年代のリクルート在籍時代に、社会人の学びを支援する雑誌の編集長を務めていました。その当時、夜間のMBAなどに通う社会人学生にも数多く話を聞いてきました。
彼らが口を揃えて言うのは、「今思えば、大学時代の勉強は与えられた知識を詰め込んでいただけだった。社会人になり多くの経験を積んだ今は、自分なりの問題意識を持って勉強に取り組んでいるので、吸収できるものははるかに大きい」ということです。
私自身も、30歳のころに大学院に通った経験がありますし、今も自分自身のスキルアップのために、仕事の合間をぬってセミナーなどにも通っていますが、彼らと同じように感じています。
実際に、ビジネスの現場で経験を重ねると、自分の知識不足を痛感したり、経験だけでは解決できない課題に直面したりすることが頻繁にあります。このような問題意識を持って大学院などに通うと、現実のビジネスに直結する生きた学びを体験できるのです。
「学ぶとはこういうことだったのか!」という新鮮な気づきがそこにはあります。これは社会人経験のない学生時代には、なかなか感じることができないものです。社会人になってから「生きた学び」を体験した人は、学んだことを現場の問題解決に活かし、その過程で生まれた問題意識を持ってさらに新しいことを学ぶという「学び続けるサイクル」に入っていきます。
このような人たちこそ、これからの時代の「成功するリーダー」です。彼らは、年齢・キャリアに関係なく、新しいテーマを発見し、学び、成長し続けていきます。








