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The Style Concierge

形の見えないモノが得意

kaya202104

お金持ちとそうでない人には、お金の使い方に大きな違いがあるといわれる。お金の使い方というのは、その人の「生き方」そのものであると言い換えることもできるが、お金に対する考え方が違えば、経済的な格差が生じるのは当然といえば当然のことである。

形が見えないモノで分かる、お金に対する認識

お金に対する認識にもっとも差が出るのは、形のないモノに対峙した時だろう。ここで言う形のないモノとは、ブランドや情報、ノウハウなどのことである。

形がはっきりと見えているモノは分かりやすい。食べ物はその典型だが、1個のトマトは1個のトマトであってそれ以上でもそれ以下でもない。よほど高級なトマトでもない限りは、食欲を満たすための相応の価格になっており、種類によってそれほど大きな違いは生じない。1人の人間が食べられる量には限りがあるので、1個で十分に食欲を満たせる食材に対し、余分に買う人もいないはずだ。

つまり形がはっきり見えているモノについては、人はほぼ同じ認識をするので、価値についても解釈の違いは生じにくい。食材に限らず、いわゆる生活必需品というのは、多くが似たような状況であり、その価値が誰にもはっきりと分かる。

ところが形がはっきり見えないモノや抽象的なモノはそうはいかない。

ブランド品は極めて高価だが、製品の原価はびっくりするほど安い。コストの多くはその製品が持つブランドを構築するためのマーケティング業務に費やされている。ブランド品を買っている人は、モノに対してというよりも、そのブランドに対してお金を払っていることは多くの人が認識していることだろう。

しかしながら、こうした形が見えないモノというのは、わかりやすい基準がないため、価値の根拠も曖昧になる。タダ同然のモノも高値で売りつけることが可能となってしまう。このため、形が見えないモノに対するお金の使い方には、その人の性格やセンスというものが色濃く反映されてしまうのだ。

形が見えないモノへの支出で失敗しないためには、抽象的な商品には一切、お金を払わなければよい。形が見えるものにしかお金を払わない生き方というのは、確かに堅実だが、一方で高い付加価値とは無縁ということでもある。こうした地味な支出にしか興味がないという人で、経済的に大成功したという人を筆者は見たことがない。

多かれ少なかれ、経済的に成功する人というのは、形が見えないモノに対する関心が高く、それがマネーリテラシーにつながっている。では、形の見えないモノの代表であるブランド物を買い漁っている人が経済的に成功できるのかというとそうではない。

加谷珪一

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