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The Style Concierge

形の見えないモノが得意

価値を生み出すのか、価値を消費するのか

では、同じ形が見えないモノに対する支出であっても、成功できるお金の使い方とそうでない使い方には、どんな違いがあるのだろうか。それは、価値を生み出しているモノにお金を出しているかどうかで決まる。

ブランド物について言えば、ブランドという形のないものをただ消費しているだけでは、お金持ちにはなれない。だが、同じ形のないモノであっても、ブランドを生み出している企業の株への投資であれば、それは将来、お金を生み出す支出となる。

情報も同じである。情報には形がなく、その価値も人によって様々であり、ある意味では値段の付けようがない。だが時に情報というのは、とてつもなく高い価値を持つことがあり、重要情報に対する支出を決断できれば、後で大きなリターンとして帰ってくる。

分かりやすく言ってしまえば、形が見えないモノそのものに支出をしていると豊かになれず、逆に形の見えないものを作り出すことにお金を投じれば、豊かになれるというメカニズムである。

薄利多売となっている一部業種を除き、ビジネスで儲かるということは、より高い付加価値を提供したことを意味する。形が見えるモノは、大きな付加価値を加えることが難しく、利益も限定的となる。一方、形が見えないモノは、価格設定の柔軟性が高く、容易に高い付加価値を加えやすい。

価格帯が高い商品では当たり前の概念だが、安い商品とは異なり、価格が高い方がむしろ販売戦略上、有利になることも多い。品質を1.2倍にするために2倍のコストをかけて、価格も2倍にした方が、むしろ売れやくなるのだ。

そうであるならば、その付加価値を消費する側ではなく、生み出す側になった方が有利というのは自明の理だろう。

冒頭で食材の話をしたが、形が見えやすいモノであっても、ブランド野菜などに代表されるように、付加価値が極めて高い商品も存在する。付加価値の大きさを常に意識することは、経済的成功への最短距離である。
 

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

連載コラム

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加谷珪一 著
 
「日本は小国になるが、それは絶望ではない」
KADOKAWA
単行本 1,430円
 
国際競争力の低下と少子高齢化が進む日本の未来とは?

将来の日本は小国になると予想し、小国になることは日本再生のチャンスであると唱える気鋭の経済評論家が、戦後最大の転換期を迎えた日本の新しい国家像を紐解く一冊。


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