ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

“当たり前”が深堀りを妨げている

メンタルトレーナーの高畑好秀氏が、悩めるエンリッチにアドバイスする本コラム。意外な視点からの言葉に、思わずハッとさせられるかもしれません。今回のテーマは、共通認識や先入観による「当たり前」だと思うこと。自分にとってはそうでも、相手からするとどうでしょうか?

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“当たり前”を前提に話をすると
相手を追い詰めてしまうことがある

先日、あるピッチャーを指導する機会がありました。彼は、どうしても打たれやすいコースにボールを投げてしまうようで、「それじゃいけない、内角低めを狙わないと三振は取れないよ」と、野球でいうところの定石のアドバイスをしたところ、「そこに投げるにはどうすればいいのでしょうか」という、さらなる質問が返ってくることに。

何気なしに「的のように目がけて投げればいいんだ」と答えましたが…よくよく考えると、彼はそれができないから悩んでいるわけで、私のアドバイスは的外れだと気付かされました。本来であれば、内角低めに投げるためのモーションや目線といった、具体的なメソッドを求められているのに、実際のところ、私はそれを理解していなかったというわけです。次いで「高畑さんは、どうやって狙っているんですか」と尋ねられましたが、上手に答えることはできないままでした…。

後日、他の投手に会った時、同様のことを聞いてみたのですが、彼は「当たり前のように投げているので、深く意識していない」という答え。そこで協力してもらい、内角低めに投げるためのメソッドを言語化しましたが、ここで思ったのは、「自分にとっての当たり前は、必ずしも他に人にとってそうではない」「当たり前だと思うがゆえに、深堀りをして考えていない」ということでした。

野球に限らず、皆さんも、「これはできて当たり前」「誰もが知っていること」といった、共通認識はあると思います。「この業界にいると知らないとダメ」「これができないと一人前と言えない」など、それは数え上げるとキリがないほどです。

しかしながら、人生経験や業種・業界に携わる年数は人それぞれで、誰もが同じ「当たり前」を有しているとは限りません。もちろん、最低限覚えておく・身につけておく知識やノウハウはありますが、当たり前を前提に話を進めるばかりでは相手からの理解を得られず、ともすると「自分はこんなこともできない・わからないのか…」と、追い詰めてしまう可能性もあります。大事なのは、相手の経験やスキルに応じて当たり前の段階を柔軟に変え、対応していくことです。こういった気遣いは、それこそ誰もが「当たり前」と思っているでしょうが、ことビジネスや専門分野の世界だと、忘れがちになっていると思います。

高畑好秀

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