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資産家がお金を残して他界する理由

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時々、使い切れない程のお金を残して亡くなる独居老人がニュースになることがある。こうした人たちを、いわゆる「お金持ち」と呼んでいいのかは分からないが、資産家であることに変わりはない。

このようなニュースを耳にすると、多くの人は「お金は墓場までは持っていけないのに」と不思議そうな顔をする。本コラムの読者の方であれば、実感として理解できると思うが、お金持ちの人にとって資産を使い切らずに人生を終えるのは当たり前のことであり、このニュースは特に不思議なことではない。

まとまった資産があるとお金に対する価値観が変わる

資産家がお金を使い切らずに亡くなるのは、資産に対する認識が普通の人とは根本的に違っているからである。普通の人は、お金というのは使うためにあるものだと考えている。毎月もらう給料から生活費を支出して、残りは貯金するという人が大半なので、働いて得たお金は、基本的に支出するものだと思っている。

貯金についても、イザという時のためや、マンションの頭金に使うことが主な目的なので、いつかは「使う」ことが前提となっている。しかし、まとまった額の資産があるとお金に対する考え方は大きく変わる。

資産を持っていると、その資産を運用することで利子や配当といった収入を得ることができる。あらゆる投資対象を平均すると、現時点ではだいたい3%程度の利回りが得られるので、1億円の資産があれば年間300万円が、10億円の資産があれば年間3000万円が何もしないで手に入る。

資産10億円の場合、年間支出を3000万円以内に抑えることができれば、資産額が目減りすることなく、毎年、その範囲で好きなだけお金を使える。どうしても散財したい人にとっては、少ないのかもしれないが、たいていの人にとって、年間3000万円あれば、それなりに贅沢ができるはずだ。

そうなってくると資産10億円の人には2つの選択肢が出てくることになる。

ひとつは、支出を3000万円以内に抑えて、3000万円の生活を一生続けるというもの。もう一つは、支出に上限を設定せず、3000万円を超えた場合には、元本を取り崩していくというものである。浪費癖のある人を除いて、たいていのお金持ちは前者を選択するので、理屈上、元本の資産はいつまでも減らない。

加谷珪一

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