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ウォーレン・バフェット

知的だが野心家でもある

バフェット氏のこうした肉食系の側面は、彼の生い立ちを見るとよく理解できる。バフェット氏は子供の頃から、コーラを仕入れて転売したり、競馬の予想新聞を売るなどちょっとした商才を発揮していた。株を初めて買ったのは11歳の時で、それ以来、株の面白さに目覚め、株式投資のスキルを高めていった。確かにバフェット氏は知的な人物ではあるが、お金というものに対する野心は子供の頃から持っていたことになる。

やがてバフェット氏は、コロンビア大学でMBA(経営学修士)を取得すると、投資家であり経済学者でもあったベンジャミン・グレアム氏を慕って、何回も自分を売り込み、とうとう彼の下で働くチャンスを得る。その間、バフェット氏はグレアム氏から多くの手法を学び、同時並行的に自身の資産も着実に増やしていった。そのおかげで、独立を果たした時には、すでにかなりの資産を保有するまでになっていたという。

バフェット氏は故郷のオマハに戻って投資会社を設立。家族や友人から資金を預かり投資ファンドの運用をスタートさせた。これが現在のバークシャー・ハザウェイの前身である。

投資は上がるか下がるかの二者択一であるにもかかわらず、多くの人がうまくいかず市場から撤退してしまう。その原因のほとんどは、お金に対する過度の執着である。お金に対する過度の執着があると、損をしたくないという気持ちが強くなりすぎ、機械的に売買することができなくなってしまう。

また人によっては「損をしたくない」という気持ちが強すぎて、何とか低リスクで高いリターンを得られる商品はないかと探し回ってしまう。結果として投資家にとって損するばかりの悪質な商品を掴まされてしまうケースも出てくる。

投資の世界には「リスクとリターンは比例する」という絶対的な法則がある。これはバフェット氏にとっても例外ではなく、彼も大きなリスクを取っているからこそ、相応の利益を得ることができる。この厳然たる事実をしっかり受け止めることができれば、投資に対する考え方は変わってくるはずだ。

リスクを取る以上、場合によっては投資金額の一部がなくなってしまう可能性は常に考えておく必要がある。一種の「覚悟」ということになるが、この覚悟を決めることができると、投資のスキルは飛躍的に上達するのだ。

*この記事は2017年に掲載されたものです

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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