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セブン鈴木氏が辞任。日本の流通ビジネスは大きな転換点を迎える

セブン1

セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長兼最高経営責任者がグループの経営から退く。鈴木氏はコンビニというビジネスモデルを日本に定着させた立役者であり、その功績は大きい。だが鈴木氏が開拓してきたコンビニという業態もそろそろ限界を迎えようとしている。

セブンもかつては流通革命を目指していた

セブン・グループは今でこそコンビニを主力業態とした総合流通企業だが、かつては、イオンなど競合他社と同様、当初は大型店舗を中心とした低価格路線を目指していた。

1960年代、日本でもいわゆる大型スーパーと呼ばれる業態の普及が始まったが、当時の日本はまだ貧しく、市場も硬直的だった。商品の価格はメーカーが一方的に決めるというもので、消費者にはあまり選択肢がなかったのである。

こうした旧態依然の商慣行に挑戦し、大量調達によって安い商品を消費者に提供するというコンセプトを掲げて急成長したのが、イオン(旧ジャスコ)であり、ダイエー(現イオン)であり、セブン(旧イトーヨーカ堂)といった流通企業群である。

当時、こうした試みは「流通革命」と呼ばれており、各社は米国を代表する大型スーパー「ウォルマート」のような業態を目指していた。

Walmart
ウォルマートは圧倒的な購買力を生かし、大量の製品を安値で調達することができる。その結果、店内には驚くような安値商品が並ぶ。規模を全面に打ち出したウォルマートのビジネスに対しては批判も多いが、圧倒的な安値で商品を提供することによって、低所得者層の生活水準向上に寄与し、メーカーから価格の主導権を奪ってきたというのも事実である。

日本でも同様の大型店舗を展開し、圧倒的な調達力を背景に、安い価格で消費者に商品を提供しようというのが流通各社の理想だった。


ところが日本の場合、米国と同じような展開にはならなかった。日本では大規模小売店舗立地法(いわゆる大店法)の規制があり、米国型の大型店舗の出店は事実上不可能であった。スーパー各社は、流通革命という理想を追求すべきなのか、現実路線に転換するのかの二者択一を迫られのである。

その中で、大型店舗による安値販売という理想に見切りを付け、コンビニという小型店舗による定価販売路線にいち早く切り替えたのがセブンだった。

加谷珪一

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