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ウィンドウズ10が示す、ソフトウェアビジネスの大転換

マイクロソフト

マイクロソフトが創業以来、40年間続いたビジネスモデルを大転換しようとしている。基本ソフト(OS)の新製品であるウィンドウズ10は、その中核となる製品である。近い将来、パソコン用のソフトは、購入するものではなく、サービスとして利用するものに変貌しているだろう。

ウィンドウズ10は最後のOS?

マイクロソフトは2015年7月29日、基本ソフト(OS)の新製品である「ウィンドウズ10」の提供を開始した。これまで同社は、数年に一度、機能を大幅に刷新した新しいウィンドウズを投入し、利用者に買い換えを促してきた。ウィンドウズが新しくなるたびにパソコンの買い換えも促進されるので、マイクロソフトのこうした戦略はハードメーカーにとっても好都合であった。

だが、今回発表されたウィンドウズ10はこれまでとはだいぶ様子が違っている。従来は、新しいOSにアップデートするには、有償のアップグレード版を購入する必要があった。だが、ウィンドウズ10は、1年間という期間限定ではあるものの、ウィンドウズ7やウィンドウズ8といった既存製品からのアップデートが無料となった。

ウィンドウズ7もしくは8の利用者は、自動的にマイクロソフトからアップデートの通知が配信され、アップデートに同意すると、順次、ウィンドウズ10のダウンロードとインストールが行われる。一度にダウロードが実施されるとサーバーの負荷が大きいことから、段階的に通知が送られているようである(すぐにアップデートしたい利用者は、マイクロソフトのサイトからいつでもダウンロードが可能)。

また同社は、これ以後、大規模なOSの刷新は行わないという方針を明らかにしている。今後は小規模なアップデートをインターネット経由で随時実施するのみで、大規模な機能刷新は行わないという。ウィンドウズ10は最後のウィンドウズ製品ということになる。

つまりマイクロソフトは、OSを次々と刷新して、その乗り換えによって収益を上げるというこれまでの販売戦略を根本的に見直したわけである。では、同社はこれからどのようにして収益を確保していくのだろうか。そのヒントは、このところ同社が強化している各種クラウドサービスにある。

ウィンドウズ10の発表とタイミングを合わせて、同社は、クラウド上でデータを蓄積したり、業務用ソフトを月額固定料金で利用できるサービスを強化している。ウィンドウズ10は、こうしたクラウドサービスを利用するための土台となるOSである。無料でもよいので普及を最優先し、最終的にはこうしたクラウドサービスを収益の柱としたい考えである。

加谷珪一

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