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ウィンドウズ10が示す、ソフトウェアビジネスの大転換

うまくいけばマイクロソフトは大幅に収益を拡大できる

同社の2015年6月期の売上高は約12兆円、純利益は1兆5000億円と今でもかなりの高収益企業である。しかし昨年度の純利益は今年の2倍以上だったことを考えれば、同社の収益力は低下しているといってよい。

では、OSを無料にしてクラウド上のサービスだけで同じような収益を確保することはできるのだろうか。なかなか難しいのではないかという印象を持つが、必ずしもそうとは限らないようである。

クラウド

同社の売上高の多くは、業務用サーバーなど法人向け販売であり、個人向けに販売するウィンドウズが占める割合はそれほど高くない。またウィンドウズは、世界中に普及しているため、その一部であってもクラウドサービスに移行するだけで、相当なボリュームとなる。

例えば、同社の業務用ソフト「オフィス」をクラウド経由で利用できる「オフィス365」はすでに利用者が1500万人を突破しており、利用者は急拡大している。価格体系を考えると、すでにこの事業だけで年間2000億円の収益を上げているはずだ。

同社では、世界にあるパソコンのうち10億台を3年以内にウィドウズ10に置き換えるとしている。これらの利用者が皆、クラウドでサービスを利用すれば、現在の同社の売上げをはるかに上回る業績を上げることも十分可能だ。

ウィンドウズ10には、同社の将来がかかっており、これまでになく開発には力を入れたといわれている。製品の評価は総じて高いようだ。ちなみに筆者もウィンドウズ7からアップデートしたが、特に問題なくアップデートは終了し、ドライバーなども自動的にインストールされた。

3台ほどアップデートしたが、どれも目立ったトラブルはなく、動きはウィンドウズ7と同様か、場合によっては軽快になっている。立ち上げまでの時間もかなり短縮されている。筆者のケースが一般的なのかどうかは分からないが、完成度は高いという市場での評価は間違っていないという印象だ。

マイクロソフトの戦略が成功すれば、おそらく数年以内には、ソフトウェアは購入するものから、利用するというものへと変化している可能性が高い。ソフトウェア周辺のビジネス環境も大きく変わっているかもしれない。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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