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アップルウォッチから考える、ビジネスモデルの大変革

ウェアラブル

腕時計型のウェアラブル端末「アップルウオッチ」の発売開始から1カ月が経過した。ネットでは実際に利用した感想がアップされるようになってきたが、小さくて使いづらいのではないかという事前予想に反して、評判はまずまずのようである。

筆者は、腕時計型ウェアラブル端末の普及は、ビジネスの世界における大きな転換点の一つになる可能性が高いと考えている。その理由は、ここ数年以内に急速に普及すると考えられる人工知能との親和性が非常に高いデバイスだからである。

使いづらいかどうかは問題ではない

冒頭に述べたアップルウォッチが使いやすいのかという問題意識は実は極めてナンセンスな問いである。腕時計の面積しかないタッチパネルを使って表示したり入力できる情報量など、たかが知れている。画面の大きいスマホと比較して使いにくいのはある意味で当然のことといってよいだろう。

だが、小さくて使いにくいという問題は、いずれ意味をなさなくなる可能性が高い。それは、こうしたITデバイスと人工知能のサービスが密接に結びついてくるからである。

あまり知られていないが、水面下では人工知能が急激な勢いで進歩しており、具体的なサービスが次々に登場する段階に入ってきている。メガバンクはすでにIBMの人工知能である「ワトソン」をコールセンター業務に導入する準備を進めており、今年中には一部のサービスが運用開始となる予定である。

人工知能が持つ、高度な学習機能をIT機器やAV機器に活用すると、デバイスの利用者がどのような人物で、どういうライフスタイルの持ち主なのか、人工知能が自ら理解できるようになる。そうなってくると、利用者が指示しなくても、デバイスの機能を先回りして稼働させるという話が現実のものとなるのだ。

現在のアップルウオッチでは、各種の通知が次々に画面上に表示され、利用者はかなり面倒に感じるかもしれない。しかし、人工知能のサービスが導入されれば、どのような通知を利用者が必要とし、どのような通知はいらないのか、瞬時に判断し、不必要な通知は行わないという動作が可能となる。ツイッターの内容も、本人の嗜好に合わせて、自由自在に峻別するようになるだろう。

すでにスマホでは半分実現できているが、利用者の行動履歴やGPSでの位置情報などを組み合わせることによって、利用者の現在の状況を人工知能が把握することも可能となる。今仕事中なのか、遊んでいる最中なのか、恋人といるのかを判断するのは実はたやすい。人工知能は、時と場所に応じて、必要な情報の選別基準も変えてくるだろう。

このように利用者の動向を先回りすることが当たり前になれば、画面が小さいのか大きいのかは、あまり意味がなくなってくる。機器が持つ付加価値の本質が、操作しやすいかではなく、どれだけ自分の意思に近い動作をしてくれるかという部分にシフトしてしまうのだ。

加谷珪一

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