ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

インタビュー | THE RAKE 編集長 松尾健太郎

「世界一ハイクオリティなメンズ誌」という挑戦的なコピーで2014年の11月に創刊された『THE RAKE』。メンズファッションを中心に時計や車、旅、グルメなどのライフスタイル情報を扱う正当派クラシックにしてラグジュアリーなマガジンだ。

日本版の編集長をつとめるのは、当サイトにて連載コラムも持つ松尾健太郎氏。25年にわたってメンズファッション業界に携わってきた重鎮だ。今回はそんな氏に『THE RAKE』について聞いた。

エンリッチ 松尾氏

ENRICH(以下E):『THE RAKE』はシンガポール発の高級ファッション誌という事ですが、詳しく教えてください。

松尾「『THE RAKE』は日本版が創刊される前の2008年12月に英語版が創刊されました。マーケットとしてはアメリカだけで1/3ほど売れてますね。そして、ヨーロッパ諸国で1/3、残りの1/3がアジアの英語圏で売れているという感じです。ロンドンに編集部があって、そこでファッションシューティングを担当しています」

E:どんな方がこの雑誌を立ち上げたんですか?

松尾「本社はシンガポールにあるんですが、立ち上げたのはウェイ・コーという華僑の人です。彼ひとりで本社のオーナーと編集長を兼任して、CEOもブルース・リーというすごい本名の人なんですけど(笑)、かれもシンガポールの華僑出身。ウェイ・コーはアメリカで育ってフランスの大学を出てるから、英語もフランス語もペラペラ。一般的な中国人のイメージとは違うコスモポリタン的な人です。『THE RAKE』はそういう人が立ち上げた雑誌なんです」

E:そのウェイ・コーという創設者について詳しく教えてください。

松尾「彼は日本のファッション雑誌のファンで、日本のファッションにとても詳しいんです。彼が言うには日本のクラシックファッションの本を読んで研究して、それに影響されて『THE RAKE』を出版したと。僕なんかが日本で発信していたものがアジア圏で人気が出て、それがシンガポールで『THE RAKE』として結実して日本に入ってきた。これだけイタリアのクラシックの服の情報がある国って、世界では日本しかないと思うんです。欧米のファッション誌はモード系が多いですが、日本はクラシックメインの本も多い。そして、東京だけでクラシック系のショップが100件以上あると思うんですが、東京以外にそんな街はない。イタリアでもせいぜい10~20件くらいでしょう。これだけクラシックファションの情報があふれてる国は日本しかない。それに対して海外の人が持つ憧れとリスペクトは想像以上のものがある。彼らは日本のマーケットやファッションにはアンテナを立てて、相当研究してます。ウェイ・コーは何回も日本に来てると思うんですが、おいしい寿司屋の情報は僕よりも詳しいと思いますよ(笑)」

E:シンガポールで生まれた華僑の方が、フランスの大学で学んで、日本のファッション誌に影響を受けて生まれた『THE RAKE』は非常に多国籍な本ですね。

松尾「そうですね。メディアとしては非常に多国籍です。日本版と同時に2誌、ロシア版とミドルイースト版が創刊されましたから、このテイストのファッションは世界中で受け入れられているのかも知れません。日本もかつてはブランド至上主義でしたが、今では縫製や素材にもこだわり、その洋服のバックグラウンドを知ることがオシャレとされています。そういう流れがロシアや中東にも来てますね。ブランド至上主義が終わったその次の段階」

エンリッチ編集部

Return Top