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加谷珪一|安倍政権が消費税延期を決断。これからの投資戦略はどうすればよい?

国会議事堂

安倍政権がとうとう消費増税の延期と衆院解散を決断した。一連の動きによって、今後、円安がさらに進展する可能性が高くなってきた。アベノミクスが成功するのかは依然として不透明な状況だが、その成否にかかわらずインフレが進みやすくなったと考えるべきだろう

安倍首相は当初、消費増税延期の是非について国民に信を問うというシナリオを考えていたが、17日に発表された7~9月期のGDPがこのシナリオを崩してしまった。年率換算でマイナス1.6%というあまりにも悪い数字だったことからに、結果的にアベノミクスそのものを問う解散になってしまったのである。

今のところ、総選挙で与党が大敗する可能性は低いと予想されている。もし与党が過半数を確保すれば、基本的なアベノミクス路線は継続となるだろう。日銀の追加緩和によって円にはすでに下落圧力がかかっている。ここに加えて消費税の増税延期ということになると、さらに円安圧力が高まることになり、為替主導の物価上昇が進みやすくなってくる。賃金がそれに追い付くのかは分からないが、少なくとも名目上の物価は上昇する可能性が高い。2%の物価目標は案外簡単に達成できてしまうかもしれない。

世界経済は現在、減速傾向にあるが、米国経済は今のところ順調である。しかも原油の価格下落によって、米国の個人消費がさらに刺激される可能性も高まってきている。うまくいけば、米国は世界経済減速の影響を受けず、順調に拡大していくだろう。そうなると、トヨタをはじめとする米国市場に強みを持つ日本企業の業績はさらに上振れすることになる。円安による名目上の業績拡大も加わるので、こうした企業の株価は上昇するはずだ。
アベノミクスは「3本の矢」を基本戦略としている。ひとつは財政、もうひとつは金融、もうひとつは成長戦略である。だが痛みを伴う成長戦略に対しては反対の声が大きく、かなり早い段階で構造改革の実施は断念してしまった。最近では国内の労働力不足のため、建設労働者の確保も非常に難しくなっている。せっかく予算がついても執行できない公共工事が増えているのだ。このため、経済政策はもっぱら金融に依存する形にならざるを得ない。

金融政策で効果を上げるためには、インフレ期待が十分に醸成されるまで緩和を続ける必要がある。もちろん、こうした方針に対しては、財政問題などの点から反対する声も出ているが、すでに引き返すタイミングは過ぎてしまったというのが大方の見方だろう。アベノミクスがうまくいくかどうかに関わらず、インフレが進む可能性が高まっているのだ。

円安と米国景気拡大の恩恵を受けるグローバルな製造業への投資や、ドルをはじめとする外貨投資など、円安主導のインフレをヘッジするための運用について真剣に検討する時期に入っているのかもしれない。


加谷珪一(かやけいいち)
評論家
東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事、その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。
マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
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加谷珪一のブログ http://k-kaya.com

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