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東南アジアの不動産市況

私たちが暮らすもう一つの都市ジョホールについては、まだ完成している物件が少なく、さらに1億円を超えるような部屋はほとんど取引されていないので、ナイト・フランク社がデータを出していませんが、マレーシアの首都クアラルンプール(KL)については、グラフにあるようにほぼ横ばいで安定して推移しています。

マレーシア KL
マレーシア KL

ナジブ首相の資金スキャンダルや、ISによるテロのリスクなど、マレーシアの政治的・社会的リスクがについて日本でも報じられていますが、イスラム圏の中では安定した経済運営が行われていて、現地からも世帯年収が1,000万円を超える高級住宅の買い手が増えていることから、KLの高級住宅価格は底堅く推移しています。

中東での治安リスクが混迷の度を増す中、ペルシャ湾岸諸国からも同じイスラム教国ということで、市場規模が大きく価格が安定しているKLを中心としてマレーシアの不動産市場への資金流入が進むと考えられ、今後も値動きは底堅いと見ています。また、長期的にもマレーシアの平均年齢は28歳と若く人口動態もバランスがとれている上に、KLに人口が集中するトレンドが続いていくため、KLの高級住宅はまだまだ上昇余地があるでしょう。

東南アジア主要国の首都の中でジャカルタに次いで不動産価格がここ3年好調であったバンコクですが、この期間に軍部によるクーデターや市中心部で爆発テロがあったことを考えると、特筆すべき好調さと言えます。もっとも、タイの軍部によるクーデターは、タイ式クーデターともいわれるほど他国のそれとは内容が異なります。

民主主義が機能しなくなった局面での措置として、常に国民も軍部のクーデターは意識しています。また、経済的には軍部による統治の方が、統制が取れていて良いとする人も多くいます。東南アジアの主要国の中でも製造拠点として地位を確立しているバンコクにはグローバル企業が多く進出し、こうした企業のエグゼクティブに人気の市中心部の高級住宅は、主に外国人投資家たちにより活発に取引されています。

ただ、KLと違って現地の人でこうした高級住宅を購入できる層が依然少ないことはマイナス材料です。また、バンコクはジャカルタと並んで交通渋滞がひどく、公共交通機関が集まっている市の中心部に高級住宅が集中していることも、一部の物件価格をいびつに引き上げる形になっています。

タイ バンコク
タイ バンコク

例えば、最近KLとバンコクの両都市にリッツカールトンレジデンスが完成しましたが、平米単価ではバンコクの方がKLよりも2倍近い高値がついています。これはマレーシアの1人あたりGDPがタイのそれの2倍近くあることを考えると、高騰しすぎているのは明らかです。

また、バンコクの不動産市場には長期的な不安もあります。平均年齢が36歳と東南アジアの中では比較的高く、さらに都市化による少子高齢化が、経済成長が十分に進まない中急速に進行したため、社会保障制度が維持できず、経済不安が深刻になるのではないかという見方も強まっています。これを補う形で、外国からの移民の受け入れの拡充や、外資による投資のさらなる拡大を行えるかが、長期的な住宅価格の上昇には必須となってきます。

岡村聡

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