ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

「目の前のことに集中」しない

「今」「1年後」「3年後」を同時処理

目の前のことだけをやっていればよいという感覚に染まりきってしまうと、組織の幹部に昇進した際や、自身でビジネスを立ち上げた時に、致命的な影響を及ぼす可能性がある。

ビジネス全体をうまくコントロールするためには、今、目の前にある仕事と、1年後の仕事、そして3年後の仕事について、同時進行で管理する能力が必要となる。責任ある立場にいる人にとって、余計なことは忘れて、目の前の仕事に没頭することほど危険なことはない。

言い換えれば、目の前の仕事に集中すべきというのは、労働力を時間単位で会社に提供して賃金をもらうという、いわゆる労働者的な価値観といってよい(学校の教師が似たような指導をするケースが多いのはそのためである)。これに対して、目の前の仕事をこなしつつ、先のことも含め、複数のタスクを同時進行で処理するというのは、マネジメント、あるいは資本家的価値観ということになるだろう。

労働者的な価値観のまま組織のトップに立ったり、ましてや自分でビジネスを立ち上げたりしていては、物事がうまくいかないのも当然である。中間管理職から部長以上の幹部に昇進したものの、まったく能力を発揮できなくなるケースや、優秀だと思われていたサラリーマンがビジネスを立ち上げたものの、うまくいかないというケースが散見されるが、これらに共通しているのは、先ほどから説明している労働者脳である。

カベはまだまだある。ある程度、成功してそれなりの資産を持つと、物事の同時処理の重要性がさらに高まってくる。資産の運用段階に入ると、1年後、3年後のシナリオを常にアップデートしていないと、たちまち自身の資産を減らす結果となってしまう。

成功すればするほど、お金持ちになればなるほど、人は目の前の仕事にだけ集中できなくなってくる。この事実にどれだけ早く気付いたのかが、人生に成功するのか失敗するのかの別れ道といってもよい。

*この記事は2019年3月に掲載されたものです

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

連載コラム

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