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タワマンはあまり好まない?

エンリッチkaya1911

このところマンションの売れ行きが鈍化しているが、タワーマンションの人気は相変わらずのようである。タワーマンションについては、やっかみもあるのか、廃墟になる可能性がある、修繕のノウハウが未熟でリスクが高いなど、多くの批判がある。

今回の台風では停電になったタワマンも多く、脆弱性を指摘する声も少なくない。本当のお金持ちはタワマンには住んでいないという話もあるが、本当のところはどうなのだろうか。

お金持ちは資産価値で物件を選んでいる

タワマンはお金持ちの象徴というイメージがあるが、お金持ちがあまりタワマンには住んでいないというのは本当の話である。東京商工リサーチが、全国の社長を対象に調査を行ったところ、東京のマンションに住む社長の平均階数は6.12階でそれほど高くなかったという。もっともマザーズ上場企業の社長の場合、平均階数は11.04階と高く、タワマンを好む人が多いことを伺わせる。

これはあくまでも経営者に限った話だが、お金持ちには様々なパターンがあり、日本では典型的な富裕層といわれる地主の場合、高層マンションに住んでいない可能性は高くなるだろう。

だが、お金持ちがタワマンをまったく好まないのかというとそういうわけでもない。

結果的にお金持ちが、あまりタワマンを好まないように見えるのは、結局のところ資産価値の問題に集約されると考えられる。

タワマンは最近になって数多く建設されるようなった物件であり、昔から存在していたわけではない。このためタワマンが建設されるのは、東京都内であれば湾岸エリアなど、都心中枢部からは少し距離が離れた地域である。こうしたタワマンの一部は高級物件として売り出されるので、価格はそれなりに高いが、都心の超一等地の物件と比較すると、資産価値はあまり高くない。

一方、都心の超一等地は、昔から開発が進んでいるので、大型の商業物件が売却されるといった大きなイベントがない限り、大型物件を建設できる土地が放出されるケースは少ない。また景観維持などの観点から、自治体が容積率について厳しい規制を行っているエリアもあり、こうした地域ではそもそもタワマンを建てることができない。

そうなると、そこには必然的に低層マンションばかりということになるが、こうしたマンションの価格は、階数を稼げない分、かなり高くなっている。タワマンであることよりも、土地のブランドを優先し、あえて低層マンションを購入する富裕層も多いので、必ずしもタワマンに集中するとは限らないのだ。

もっとも、超一等地に建てられた数少ないタワマンの価格は極めて高く、そう簡単に値下がりすることはない。結果的に多くの富裕層が資産保全を目的として購入しているので、お金持ちがタマワンを好まないわけではないのだ。当たり前のことかもしれないが、お金持ちにとって資産価値の保全は最優先事項であり、物件の選択においてもそれは同じである。要するにお金持ちは資産価値の高い物件を好むというだけの話だ。

加谷珪一

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