ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

価格と品質の関係を熟知している

品質と価格は比例しない

一般的に価格が高い商品は品質も高いということになるが、値段に比例して商品の品質がよくなるわけではない。

例えば、価格が1万円の時計と10万円の時計があると仮定しよう。確かに10万円の時計は、1万円の時計よりもはるかに品質は高い。しかし、10万円の時計は1万円の時計と比較した時、10倍の品質があるのかというとそうではない。

その理由は販売できる数量と関係している。

一般的な消費者からみれば、1万円の時計と10万円の時計では、財布に対する影響があまりにも違う。1万円の時計なら誰でも買えるかもしれないが、10万円の時計となると簡単には手が出ない。結果として1万円の時計と10万円の時計では、販売数量が大きく変わってくるのだ。

1万円の時計であれば、数十万個というオーダーでの販売が可能となるが、10万円の時計は万のオーダーが標準となる。さらに高級時計となれば、千個単位ということもあるだろう。

1万円の時計の原価率が50%だとすると、原価はちょうど5000円になる。この時計を2000個販売すれば、時計を売った会社には、5000円×2000個=1000万円の利益が入ってくる。しかし、10万円の時計の原価率を同じように50%に設定すると、1個売った場合の利益は5万円となる。単体で見ると大きいが、100個しか売れなかった場合の利益は500万円にしかならない。

つまり高級品ほど数が出ないので、1個あたりの利益を大きくしないとビジネスにならない。10万円の時計の原価率を20%まで引き下げれば、100個の販売で800万円の利益となり、ようやく採算が見えてくる。

つまり、価格が高いものはたくさん売れないので利益が少なく、結果として原価率を下げる必要がある。価格が高ければ高いほど品質は上がるが、価格と品質の関係、つまりコストパフォーマンスは低下する。この時計の場合、1万円の製品の原価が5000円で、10万円の製品の原価は2万円である。最終価格は10倍だが、原価は4倍にしかなっていない。

ビジネスで成功するためには、品質と価格のバランスをうまく保つ必要がある。成功者はこうした感覚をよく理解しているので、最適な価格設定ができる。一方、商品やサービスを買う側になっても、プライスに惑わされることなく、適切な支出ができるのだ。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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